10-6:詩織(しおり)の“初仕事(はつしごと)”
0-6:詩織の“初仕事”
黒い電撃――いや、データの形を取った、純粋な呪詛だ!
俺の私情が生んだ、致命的な隙。
亜美から放たれた「ソレ」が、俺の眉間に迫る!
「――させません!」
ドン! 衝撃が走る。
俺と亜美の間に、詩織が割って入っていた。
彼女が両手で突き出した数枚の御札が、黒い電撃を受け止め、バチバチと火花を散らして燃え尽きている。
「……!」
「これが、霧島さんの言う“初仕事”ですか。割に合いませんね!」
詩織は、俺を背にかばったまま、忌々(いまいま)しそうに呟く。
そして、元凶――トランス状態の亜美に向かって叫んだ。
「高円寺さん! 目を覚ましなさい! あなたは利用されているだけだ!」
『■■■■■■■■■■■ッ!』
だが、亜美には届かない。いや、聞こえていない。
彼女は、ただ呪いを吐き出す“システム”として、無感情に次の攻撃のチャージを始めた。
(クソッ! どうすりゃいいんだ!)
『――ダメ(・・)だ、小僧!』
脳内の玄が、絶望的な事実を叩きつける。
『あの娘は、もうただの術者じゃねえ!』
(どういうことだ!?)
『あのサーバー(ばけもの)と、あの娘の魂が、完全にリンクしてやがる! あの娘自身が、呪いの“依り代”にされちまってるんだ!』
(依り代に!?)
『そうだ! あの娘を止めねば、この呪いは止まらんぞ!』
玄の言葉が、俺の頭を殴りつけた。
亜美を、止める?
俺が?
俺の、就活仲間だった、あの亜美を?
「攻撃する」のか。「説得する」のか。
亜美が、再び黒い力を両手に集めるのを、俺は、ただ葛藤の中で見つめることしかできなかった。




