10-5:発見(はっけん)
俺たちは、Aチームが正面で派手な陽動を始めてくれている(かすかに発砲音と剛田さんの雄叫びが聞こえる)隙に、霊的な裏ルートを使って一気に地下へと向かった。
詩織が特定した、旧ビルの地下四階。
そこが、呪いのサーバー室――いや、「儀式場」だ。
(……このフロアか)
『ああ。澱みと悪寒が、ここから吹き出してる』
玄の声も、緊張を帯びている。
俺と詩織は、防火扉を蹴破った。
「「……!」」
二人とも、息を呑んだ。
そこは、俺のオフィスの地下ラボとは、まったく違う意味でカオスだった。
何十台ものサーバーラックが、赤い不気味な光を点滅させている。
だが、そのケーブルは、まるで血管か内臓のように床と壁を這い回り、その中心にある「祭壇」へと集まっていた。
祭壇の上には、黒ずんだ鏡と、気味の悪い御札が無数に貼られている。
そして、その祭壇の前に。
一人の少女が、座らされていた。
「……あ」
間違いない。
高円寺亜美だ。
だが、服装が違う。
俺が知っている就活生の姿じゃない。
白と緋色の、巫女装束のような服を着せられている。
彼女は、目を閉じたまま、まるで操り人形のように、祭壇に備えられたPCのキーボードを、トランス状態で叩き続けていた。
あの「呪いサイト」を、今この瞬間も、彼女が操作させられていたのだ。
「――亜美ッ!」
俺は、霧島や玄の警告も、詩織の制止も忘れ、駆け寄ろうとした。
私情だ。
私情で、動いちまった。
その瞬間。
ブウウウウウウウン―――!!
俺の接近をトリガーに、亜美の背後にあった「呪いのサーバー(依り代)」が、一斉に起動した。
赤かったランプが、憎悪を象徴するかのような、紫の光に変わる。
「……!」
亜美のキーボードを叩く手が、ピタリと止まった。
そして、ギギギ、と、錆びたブリキのように、彼女の首が、こっちを向いた。
カッ、と。
固く閉じられていた亜美の目が、見開かれた。
その瞳は、人間のそれじゃなかった。
深淵のような、暗い光を宿して。
「――■■■■■■■■■■ッ!」
亜美の口から、人の声とは思えないノイズが放たれる。
同時に、彼女の手の先から、黒い電撃のような“何か”が、俺たちに向かって放たれた!




