10-3:ブリーフィング
俺が詩織を連れて、例の地下オフィスに足を踏み入れると、ケビンと剛田さんがギョッとした顔をした。
「……Wow。New face? しかも、こりゃ本物のMikoオーラだ。ヤバいね」
「ウス」
詩織は、そのカオスな空間(最新サーバーラックと、サンドバッグと、オカルト祭壇)に、一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに無表情に戻った。
「……神楽坂詩織です。本日より、アドバイザーとしてお世話になります」
深々(ふかぶか)と頭を下げる詩織に、霧島が待ってましたとばかりに一枚のプラスチックカードを投げてよこした。
「待ってたよ」
詩織が、それを危うげなく掴む。
「君のIDカードだ。時給の計算に必要だから、入退室は必らずスキャンしろよ」
「……」
詩織は、巫女装束に似たセーラー服のまま、その無機質な「株式会社サイバー・ガーディアン」のロゴが入ったIDカードを見つめ、何とも言えない複雑な顔をしていた。
「さて、雑談はここまでだ」
霧島が、パン、と手を叩く。
空気が一気に締まった。
メインモニターに、港区の旧ビルの見取り図が映し出される。
「ブリーフィングだ。時間がない。今夜、強襲する」
霧島は、見取り図を二分割し、プランを説明し始めた。
「Aチームは、俺と剛田さん。表玄関から突入し、物理的な警備と残党を制圧する」
剛田さんが「ウス」と短く答え、傍らに置いてあった、ショットガンが収められた細長いケースの留め金を確かめた。
霧島は、俺たち二人に向き直った。
「Bチームは、浅河と神楽坂アドバイザー。あんたたちは、裏――つまり、詩織くんが破った、あの霊的な結界のルートから侵入してもらう」
「……!」
「目的は、呪術の“核”となっているサーバーと、その術者――高円寺亜美の、無力化だ。ケビンは、ここから全てのハッキング支援を行う」
詩織は、そのあまりに危険で、無茶な役割分担を、静かに聞いていた。
「……霧島さん」
「なんだ?」
「初仕事から、随分と無茶をさせますね。私を試しているのですか?」
霧島は、その牽制を、ニヤリと笑って受け流した。
「当然だ。時給分は働いてもらうさ、霊的アドバイザー殿」




