9-9:新(あら)たな“敵(てき)”
俺が、腕の中の詩織の寝息に、わずかに安堵していた、その時。
ノートPCのスピーカーから、霧島の冷たい声が響いた。
『――ヒュウ』
彼は、PCの向こうで、詩織の功績に小さく口笛を吹いた。
「上出来だ、巫女。……いい仕事だった」
その声は、労いというより、優秀な「ツール(・・)」を評価する響きだった。
『特殊事案対応室、ただちにその座標――港区、旧○○ビル――を、“物理的”に制圧する』
霧島が、オフィスにいる部下(剛田さんたちか?)に指示を飛ばしているのが分かる。
『浅河』
「……はい!」
『お前も来い。その巫女は、そこに寝かせておけ。お前の“獲物”のケリは、お前がつけるんだ』
(俺も……行くのか!)
腕の中の詩織を畳の上にそっと横たえ、俺が立ち上がろうとした、その時だった。
「……だめ……」
「え?」
詩織が、意識を失ったまま、うわ言のように呟いた。
その顔は、疲労だけでなく、恐怖に歪んでいる。
「……見えたんです……最後に……」
「詩織?」
「アジトで……呪いを、実行していたのは……」
「……」
「――高円寺……亜美さん……?」
「……なんで……?」
ドクン、と俺の心臓が嫌な音を立てた。
血の気が、足の先から一気に引いていく。
高円寺亜美?
なんで、その名前が出てくる?
あの日、X社の件で俺に感謝していた、俺の就活仲間だった、あの亜美が?
(続く)




