9-4:巫女(みこ)の決意(けつい)
「そのサーバーの場所が分からないから困ってんだよ!」
俺が、苛立たしげにテーブルを叩くと、詩織は静かに息を吐いた。
彼女の視線は、俺のノートPCに映る霧島と、俺自身との間を一度だけ往復する。
「……一つだけ、方法があります」
「え?」
詩織は、覚悟を決めた目で、俺――いや、正確には、俺の中にいる玄を、まっすぐに見据えた。
「私が、玄夜神社の“ご神体”にアクセスします」
「ご神体に……?」
「はい。そして、愁さん(と玄様)の力を“増幅器”として使、敵のサーバーの“霊的座標”を、強制的に探り出します」
(霊的座標? 増幅器?)
俺が、そのオカルトとデジタルの造語に混乱していると、脳内の玄が激昂した。
『小娘ッ! 正気か!』
玄の怒号が、俺の頭に響き渡る。
『そいつぁ“神降ろし”の類だぞ! ヤツらの呪詛結界に、お前が生身の精神で飛び込むなんざ、自殺行為だ!』
“神降ろし”。
その言葉のヤバさに、俺の背筋が凍る。
俺の表情が(玄のせいで)歪んだのを読んだのか、詩織は揺るがない目で答えた。
「あなた(鬼神)が目覚めた今、これくらいのリスクは、覚悟の上です」
ノートPCの画面の奥で、霧島が、この最高にイカれた作戦会議を、面白そうに黙って見つめていた。




