8-7:“首輪(くびわ)”ではなく“共闘(きょうとう)” 俺(おれ)の精神世界(せいしんせかい)で、二(ふた)つの強大(きょうだい)な「霊体(れいたい)」が静(しず)かににらみ合(あ)う。
玄の黒いオーラは、悔しさと負い目で不安定に揺らめいている。
対する霧島の白い光は、一切のブレもなく、絶対的な強さでそこにあった。
「……事情は飲み込めたようだな」
霧島の声が響く。
彼はまず、沈黙する鬼神に向かって言った。
「鬼神・玄。そして、その“器”たる、浅河愁」
初めて、俺の存在も明確に「契約の相手」として認識された。
「――あんたたちに、“契約”を持ちかける」
『……契約だと?』
玄が、うなるように言った。
「そうだ」
霧島は、俺と玄を同時に見据える。
「江戸の“やり残し”を、片付けるぞ」
その言葉は、俺の胸にも、玄の魂にも、深々(ふかぶか)と突き刺さった。
「俺は、あんたたちを“監視”する。それは変わらない。あの巫女の小娘のように、生ぬるい見守り方じゃない。俺の組織の『管理下』に置く」
『……テメェ!』
玄が怒りに身を震わせる。
だが、霧島は、それを手で制するように続けた。
「だが、同時に“支援”もする」
「……え?」
思わず、金縛りの俺の口から声が漏れた。
「俺の会社(サイバー・ガーディアン)のリソース(・・・・・)を使え。金、機材、情報、人員(ケビンや剛田さんのことか?)、あんたたちの“仕事”に必要なもんは、俺の裁量で提供してやる」
(……なんだよ、それ)
「その代わり」
霧島の白い光が、俺たちを射抜いた。
「あんたたちの“力(鬼神の戦闘力と、浅河くんのハッキング能力)”を、俺に貸せ」
霧島は、玄に、最後の通告を叩きつけた。
「これは、あんたが踏み倒した“仕事”だ。
――俺の先祖が、あんたに(・・・・)果た(はた)せなかった(・・・・・)、“依頼”の続きだ」
それは、玄が決して断れない、「負い目」という名の鎖だった。
『ぐ……! この……狐小僧が……!』
玄の、悔しさに満ちた呻き声が、精神世界に響き渡った。




