7-3:静(しず)かなる牽制(けんせい)
霧島は、硬直したままの詩織と、狼狽を隠せない俺を面白そうに見比べた。
そして、ニヤリと口角を上げる。
「浅河くん」
「は、はい!」
俺は、ビビって裏返った声が出た。
「いいねぇ。いい“サポーター”がいるじゃないか」
「……え?」
サポーター?
霧島は、俺のそんな疑問は無視して、続けた。
「……ウチの会社(サイバー・ガーディアン)もね、ああいう古い“プロトコル”を守ってる家系には、いくつか『出資』していてね」
プロトコル……家系……?
(こいつ、まさか!)
俺は息を呑んだ。
霧島は、詩織がただの大学生じゃなく、「神楽坂の巫女」であることを、完全に見抜いた上で、牽制球を投げてきやがった。
「(……!)」
詩織の肩が、ピクリと震える。
霧島は、その鋭い目を、俺から詩織へとゆっくり移した。
まるで、品定めするかのように。
「どうも。浅河くんの上司の霧島です」
完璧なビジネススマイル。だが、目は笑っていない。
「――ウチの浅河が、“副業”の方でご迷惑をおかけします」
「……!」
詩織が、息を詰めた。
「ウチの」という所有権の主張。
「副業」という、俺たちの“仕事”への格下げ。
そして、霧島は、最後の釘を刺した。
「――彼がもし“暴走”したら、俺(会社)が責任を持って“処分”するので。ご安心を」
処分。
その、冷たい会社用語が、俺の背筋を凍りつかせた。
それは、詩織の「監視役」としての存在意義を否定し、俺と玄の生殺与奪の権が、会社(霧島)側にあるという、静かな、だが絶対的な脅迫だった。




