6-7:ハイブリッド除霊(じょれい)
「一旦、退くぞ!」
俺は詩織を抱えて、現場から全力で逃走した。
背後でヌシの咆哮が聞こえるが、振り返ってる余裕はねぇ。
「はぁ、はぁ……。どうするんですか、愁さん」
安全な場所まで逃げて、詩織が息を切らしながら言う。
「物理攻撃が効かない相手なんて……。私一人では、封印する準備も時間がかかりすぎます」
俺は、必死に頭を回転させる。
玄の物理は通じない。詩織の霊力も、相手がデカすぎて押し負ける。
なら、どうする? 俺に何ができる?
俺の武器は……そうだ。
「表」の技術だ。
「……物理がダメなら、デジタルだ!」
「はい?」
詩織がキョトンとするが、俺には勝算が見えてきた。
俺たちはタクシーを拾い、新宿のオフィスビルへ直行した。
深夜3時。当然、ビルは閉まっているが、俺はセキュリティパスを持っている。
「会社のラボを使う。霧島さんには内緒だぞ」
地下3階の「特殊事案対応室」。
俺はケビンのデスクから、使えそうな機材を片っ端から引っ張り出した。
指向性スピーカー、高出力のアンプ、それから小型ドローン数機。
「詩織、祝詞のデータはあるか?」
「え? はい、一応、電子書籍で……」
「それを貸してくれ! あと、一番強い御札もだ!」
俺はキーボードを叩き、祝詞のテキストデータを音声合成ソフトに読み込ませる。
さらに、それを人間には聞こえないレベルの超高周波に変換する。
「霊体ってのは、一種のエネルギーの波形だ。なら、逆位相の波形をぶつければ相殺できるはず……!」
俺は、即席の「対霊用音響兵器」を組み上げた。
次はドローンだ。
「詩織、この御札、ドローンに貼れるか?」
「は、はい。でも、何をする気ですか?」
「“空飛ぶ結界”を作るんだよ」
俺はドローンの制御プログラムを書き換える。
複数台が連携して飛び、空中に立体的な魔法陣――いや、結界を描くようにプログラミングする。
『ほう……。面白えカラクリじゃねえか』
脳内で、玄がニヤリと笑った気がした。
『これなら、あの泥人形にも一泡吹かせられるかもしれん!』
午前4時過ぎ。
東の空が白み始める前、俺たちは「ハイブリッド除霊兵器」を携えて、再び決戦の地・浅草へ向かった。




