6-5:デジタルとアナログの調査(ちょうさ)
「……ひどいですね、こりゃ」
午後。俺は帝都建設の現場監督に連れられて、問題のエリアに立っていた。
ヘルメットに安全帯という、いつものパーカー姿からは想像もつかない格好だ。
手元のスペクトラムアナライザ(電波を可視化するすげぇ機械だ)の波形が、狂ったように乱高下している。
「だろう? 妨害電波だ。きっと、再開発反対派の仕業に違いねぇ」
監督が苛立たしげに唾を吐く。
「(……どう思う、玄さん)」
俺は、表向きは機械を操作するフリをしながら、意識を内側に向けた。
『臭ェ。……鼻が曲がりそうだ』
玄の声が、苦々(にがにが)しく響く。
『こりゃあ、人為的な“嫌がらせ”なんぞじゃねぇ。もっとドロドロした……怨念の塊だ』
間違いない。
この計器が拾っている異常なノイズ。
それは、科学的な電波じゃなく、強烈な「霊障」そのものだ。
「――すいません、少しよろしいですか」
その時、凛とした声が現場に響いた。
振り返ると、作業着ではなく、いつものセーラー服姿の詩織が立っていた。
(なんで入ってこれたんだ!?)
「あぁ? なんだ嬢ちゃん、ここは関係者以外……」
「玄夜神社の者です。この土地の古い資料について、確認したいことがありまして」
詩織は、有無を言わせぬ目力で監督を黙らせると、俺の隣に来て、こっそりと古い地図を広げた。
「……愁さん。ビンゴです」
詩織が指差したのは、今まさに俺たちが立っている、コンクリートで埋められた一角。
「ここには、江戸時代から続く、古い『井戸』がありました」
「井戸?」
「はい。水神様を祀る、大切な井戸です。それを……」
詩織が、悔しそうに足元のコンクリートを睨む。
「……お祓いもせず、工期優先で強引に埋めてしまったようです。息ができなくなった土地の神が、怒り狂うのも無理はありません」
原因は、ハッキングでもテロでもない。
古い土地の怒り――「霊障」だった。




