6-4:二重(にじゅう)の依頼(いらい)
翌朝。
出社した俺のデスクに、分厚いファイルが置かれていた。
差出人は、もちろん霧島だ。
「おはよう、浅河くん。早速だが、仕事だ」
霧島は、栄養ドリンクを片手に、ニヤリと笑った。
「クライアントは、大手ゼネコンの『帝都建設』。場所は……台東区、浅草だ」
「えっ?」
俺は、思わず声を上げた。
昨夜、詩織と話していた、まさに「あの場所」じゃないか。
「依頼内容は、こうだ」
霧島が、モニターに現場の映像を出す。
映っているのは、激しい砂嵐のようなノイズだけ。
「現場の監視カメラが、数日前から謎のノイズで全滅。さらに、現場事務所のネットワークも、原因不明のダウンを繰り返しているらしい」
帝都建設側は、これを再開発に反対する勢力による「サイバーテロ(妨害工作)」だと疑っているらしい。
「……なるほど」
俺は、生唾を飲み込んだ。
(サイバーテロなんかじゃねぇ。これは……)
「浅河くん。君、地元だろう?」
霧島が、俺の肩をポンと叩いた。
「ちょうどいい。『地元枠』だ。現地調査、任せたぞ」
「……はい?」
適当すぎる理由に、俺はポカンとする。
だが、霧島の目は笑っていなかった。
(こいつ……もしかして、全部分かってて……?)
俺の疑念をよそに、霧島はヒラヒラと手を振って自分の席に戻っていった。
こうして俺は、「表」の会社員として、「裏」のヤバい現場に堂々(どうどう)と乗り込むことになった。




