表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/19

1-2:神社の“跡地”

 結局、夕飯もろくに喉を通らず、俺はあてもなく夜の浅草をフラついていた。

 就活全滅。おまけに思い出の場所まで破壊される。

 令和の世は、俺に優しくねぇ。


 ザァァ……。

 冷たい秋の夜風が、パーカーのフードをすり抜けていく。

 いつの間にか、足はあの場所に向かっていた。


(あ……)

 玄夜神社の、跡地。

 昼間テレビで見た光景が、目の前に広がっている。

「……ひっでぇな」

 鳥居もやしろも、何もかもが無くなっていた。

 あるのは、無機質な重機と、工事用の資材だけ。


 真新しいフェンスが、立ち入り禁止だと主張するように俺の行く手を阻んでいる。


 時刻は、スマホの表示で『00:00』。

 深夜0時。日付が変わった瞬間だ。

 こんな更地になっても、ここが「神社だった場所」であることは変わらない。

 ガキの頃、悪いことをして神様に謝った記憶が蘇る。


(……一応、拝んどくか)

 何に、とは分からない。

 失われた思い出にか、あるいは、俺の終わってる就活にか。

 なんとなく、そうしたかった。

 フェンスの前で、俺は静かに目を閉じ、手を合わせようとした。


 その、瞬間だった。

 ピカッ――!

「うおっ!?」

 目の前が、真っ暗な光に包まれた。

 いや、光が暗いってなんだ。

 例えるなら、闇が凝縮して一瞬だけ輝いた、みたいな。


「な、なんだよ……!?」

 光の発生源は、フェンスの内側。

 更地のド真ん中。


 あの日、俺たちの秘密基地だった――神木の切り株。

 あのデカい木の、地面に残された根っこの部分が、まるでコールタールみたいな黒い光を放っている。


 ゴゴゴゴゴ……!

 地面が揺れてる?

 いや、違う。空気が、ビリビリと震えてるんだ。


(やべぇ、なんかヤベェぞ!)

 俺の本能が、全力で「逃げろ」と叫んでる。

 だが、足がすくんで動かない。

 見ていることしかできない俺の前で、その黒い光は、ゆっくりと人型を形作っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ