5-5:最悪のタイミング
そして、運命の内定式、当日。
「……似合わねぇ」
俺は、クローゼットの奥から引っ張り出した、就活用のヨレたスーツに着替え、鏡の前で呟いた。
『テヤンデェ。なんだその窮屈な格好は。葬式か?』
(社会人の戦闘服だよ! これで、俺もまっとうな世界に……)
俺が、ネクタイを締め直し、実家の玄関を出ようとした、その瞬間。
ガシャアン!
玄関の引き戸が、勢いよく開け放たれた。
「――愁さん!」
詩織が、血相を変えて飛び込んできた。
いつものクールな彼女からは、想像もつかない慌てようだ。
「どうした、詩織!?」
「大変です! 高円寺さんが!」
詩織が、タブレットの画面を俺に突きつける。
そこには、X社の内部チャットらしきログが映っていた。
「X社が、あなたのハッキングを、『高円寺亜美による内部犯行』だと断定しました……! 彼女、今、社内に監禁されています!」
「なっ……!?」
亜美は、俺が渡した証拠を盾に、X社に内定辞退を申し出たらしい。
それが、逆に連中を刺激した。
全ての罪(データ横領)を、亜美一人に被せようとしていた。
その時。
ピコン、と詩織のタブレットに、通知が届いた。
あの、電子の「恨み箱」からだ。
『助けて、浅河くん……! 私、どうしたら……! 助けて……!』
亜美の、悲痛な「恨み」のメッセージだった。
『――テヤンデェ、小僧!』
玄が、俺の脳内で吼えた。
『“仕事”だ! 女の涙を、見捨てるか!』




