4-3:エピローグ
ガイアフロント社は、終わった。
社長の黒崎は逮捕され、違法な地上げ、脱税、その他モロモロの悪事が全て暴かれた。
俺の実家への嫌がらせも、矢切と彼の人力車仲間(なぜか地元のご隠居たちまでいた)が、放火犯どもを事前に取り押さえてくれていた。
浅草に、ひとまずの平和が戻った。
そして、俺は。
「……はぁ。お祈りメール、再び、か」
詩織のアパートで、俺はノートPCを前に、デカいため息をついていた。
事件は解決したが、俺の就活は、まったく解決していなかった。
(まぁ、事件のせいで面接ブッチしたから当然だが)
「お疲れ様です、愁さん」
詩織が、俺に熱いお茶を淹れてくれる。
すっかり、ここが俺の第二の家みたいになってる。
「……これから、どうすっかなぁ」
『フン。決まってんだろ、小僧。“仕事”だ』
玄が、脳内で退屈そうに言う。
「もう、ガイアフロントは終わっただろ」
「いいえ」
詩織は、静かにタブレットの画面を俺に向けた。
そこには、あの、電子の『恨み箱』。
そして、新たな書き込みが、また一つ。
『夫が、悪質なカルト宗教に騙されています。全財産を寄付しろと……。助けてください』
「……」
俺は、その画面を無言で見つめる。
『フン。どいつもこいつも、懲りねぇ連中だ』
玄が、楽しそうに笑う。
俺は、お茶を一気に飲み干すと、音を立てて湯飲みを置いた。
立ち上がり、パーカーを羽織る。
「愁さん?」
「……散歩だよ、散歩」
俺は、アパートを出た。
向かった先は、夜の浅草。
ライトアップされた雷門を、見下ろせる雑居ビルの屋上だ。
秋の夜風が、少し冷たい。
「ったく……」
俺は、ポケットから「黒蓮華」を取り出し、それを指先で器用に回してみせる。
すっかり、手に馴染んじまった。
「令和の世も、世知辛いぜ」
それは、いつの間にか移ってしまった、江戸の暗殺神の口癖。
俺の就活は終わらない。
だが、俺のもう一つの「仕事」も、まだ始まったばかりらしい。




