表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/168

22-3:雷門決戦(ライブスタート)


深夜2時。


草木も眠る丑三つ時だが、今の浅草に静寂はない。


雷門の大提灯から噴き出す黒い瘴気が、夜空を不気味に焦がしている。


その提灯の下。


俺――浅河愁は、たった一人で仁王立ちしていた。


『……愚かな』


どこからともなく、不快なノイズ混じりの声が響いた。


ウツロだ。


姿は見えない。だが、その声は空間全体から響いてくる。


『ノコノコと顔を出すとはねぇ。……自分から“誹謗中傷の的”になりに来たのかい?』


俺のスマホが震える。


位置情報が特定されたのか、SNSには『犯人発見』『雷門にいるぞ』『トツれ』という書き込みが溢れかえっていた。


「へっ。コソコソ隠れてねえで出てきたらどうだ?」


『お前ごとき、私が手を下すまでもない』


ズズズズ……!


虚の嘲笑と共に、雷門の影から「それ」は現れた。


アスファルトから湧き出した黒い泥。


いや、それは泥じゃない。


無数の「文字」だ。


『死ね』『消えろ』『犯罪者』『嘘つき』『ゴミ』


ネットに書き込まれた罵詈雑言が、ヘドロのように固まり、巨大な人型を形成していく。


身長3メートルを超える、悪意の集合体。


「炎上の化け物」だ。


『見ろ。これが世間の声だ。……潰されろ、社会のゴミめ』


化け物が、ドロドロの腕を振り上げる。


物理的な質量と、精神汚染の呪いを兼ね備えた一撃。


まともに食らえば、肉体も心もミンチになる。


だが。


俺は、逃げなかった。


「……潰されるのは、どっちかな」


俺は背負っていたバッグから、あるモノを取り出した。


武器じゃない。


「三脚」だ。


『……は?』


虚が、呆気にとられたような声を上げる。


俺は三脚を地面にガシリと立て、そこに自分のスマートフォンをセットした。


カメラのレンズを、目の前の化け物と、自分自身に向ける。


そして、動画配信アプリを起動。


タイトル欄に、迷わずこう打ち込んだ。


『【浅草】深夜の雷門で“お祓い”してみた【鬼神】』


『な、何を……!? 遺言でも残す気か!?』


「いいや。……これから始まるのは、処刑じゃない」


俺は、画面上の赤い「配信開始」ボタンを、親指で強く押し込んだ。


《ON AIR》


瞬間、接続者数カウンターが回り始める。


『うわ、本当にいた』『反省なしかよ』『炎上商法乙』


罵倒のコメントが弾幕のように流れる。


だが、俺は不敵に笑い、カメラのレンズ越しに、世界中の「野次馬」たちを睨み据えた。


「――よぉ、浅草の皆。そして画面の前の皆」


俺の腹の底から、玄さんの覇気が溢れ出す。


「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 今宵、浅草・雷門にて行われまするは、前代未聞の大立ち回り!」


俺は、腰にいた霊刀ぼくとうを抜き放ち、見得みえを切った。


「嘘か誠か、その目で確かめな! ……本当の“祭り”を見せてやるよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ