19-2:粉砕
「ひっ、ひぃぃぃッ!?」
運転席のガラス越し。
風水建築士の男が、引きつった顔で悲鳴を上げた。
無理もない。
重機のアームを駆け上がり、目の前に迫った俺(玄)の姿は、まさに地獄から這い上がってきた鬼そのものだっただろうからな。
「ガラス一枚で、安全圏にいるつもりかよ!」
俺(玄)は、蒼い炎を纏った右拳を、躊躇なく振り抜いた。
ガシャアアアアアンッ!!
強化ガラスが、飴細工のように粉々に砕け散る。
飛び散る破片の中で、俺(玄)は男の作業着の胸倉をむんずと掴み、強引にコクピットから引きずり出した。
「がっ、げほっ……!?」
男は宙吊りにされ、手足をバタつかせた。
さっきまでの余裕たっぷりの薄ら笑いは消え、あるのは純粋な恐怖だけだ。
「ま、待て! 話し合おう! 金か!? 金ならいくらでも――」
「うるせえ!!」
俺(玄)は、男の顔面に至近距離から怒号を浴びせた。
「テヤンデェ! 浅草の地べたはなぁ……テメェらの風水ごっこのオモチャじゃねえんだよ!」
俺たちの店を壊したこと。
詩織を泣かせたこと。
そして何より、この土地に眠る人々の営みを、重機で踏みにじったこと。
そのすべての落とし前を、今ここでつけさせる!
「土地荒らしは……さっさと出て行きなァ!!」
ドゴォッ!!
俺(玄)は、男を地面へと放り投げると同時に、空いた右拳を、剥き出しになった重機の制御盤へと叩き込んだ。
バチバチバチッ!! チュドオオオオン!!
制御盤が火花を吹き、電子回路が物理的かつ霊的な衝撃で焼き切れる。
風水を操るための改造パーツも、まとめてスクラップだ。
「あ……あぁ……俺の、最強の風水重機が……」
地面に転がった男は、黒煙を上げる愛機を見上げ、白目を剥いて泡を吹いた。
そして、そのまま糸が切れたようにガククリと気絶した。
プスン……。
重機のエンジンが停止し、辺りに静寂が戻る。
完全なる沈黙。
それは、俺たちが「最初の砦」を守り抜き、敵の先兵を撃退した勝利の証だった。
「……ふぅ」
俺(愁)に意識が戻る。
拳が少し痛むが、それ以上に胸のすくような爽快感があった。
「やったな、玄さん」
(おうよ。……いい運動になったわい)
俺たちは、黒煙を上げる重機の上で、勝利の拳を握りしめた。




