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3-3:敵の反撃

その夜。

俺と玄、そして詩織(後方支援)は、蔵前の雑居ビルの前にいた。


矢切の情報通り、古いビルのテナント看板には『ガイアフロント都市開発・第二営業部』とある。


「詩織、ドローン飛ばす。ビル内の見取り図と、敵の人数を把握はあくするぞ」

「了解。私はハッキングで、ここの監視カメラをジャックします」

俺は小型ドローンを飛ばし、換気口かんきこうから内部に侵入させる。


スマホの画面に、ビルの内部が映し出された。

(……おかしい)


「どうした、小僧?」

「静かすぎる。フロアに電気がついてねぇ。……まるで、もぬけの殻だ」

わな、ですね」

詩織が、冷静につぶやいた。

「こちらの動きが、バレています」

『チッ! 矢切とかいう小僧、俺たちを売ったか!?』

「いや、あいつの目は本気だった。……俺たちが、試されてるんだ」


俺がそう言った瞬間。

ビルの入り口が開き、中から屈強くっきょうな男たちがゾロゾロと出てきた。


その数、10人。

全員、スーツの下に隠しきれない筋肉をまとっている。

「……ようこそ、鬼神サマ?」

リーダー格の、耳にタコ(格闘家の証拠)ができた男が、ニヤリと笑った。


「てめぇらか。最近、俺らの“シマ”でコソコソぎ回ってたネズミってのは」

こいつらが、矢切の言ってた「現代の用心棒」。

元・半グレの格闘技経験者。


『フン。上等じゃねぇか。ちょうど、新しい得物を試したかったところだ!』

玄が、俺の体の主導権を握る。

俺の懐には、あの「黒蓮華かんざし」が忍ばせてある。


「やれ!」

リーダーの号令で、10人が同時に襲いかかってきた。


「(玄! 殺すなよ! 峰打ち、峰打ち!)」

『分かってらぁ!』

玄(俺)は、突っ込んできた男の腕を取り、流れるような体捌たいさばきで関節をめる。

ゴキッ!


「ぐああああ!」

『チッ、こいつら、骨がかてぇ!』

「(当たり前だ! 鍛えてる連中だぞ!)」

玄の古武術は確かにスゴイ。

だが、相手は現代の格闘技(MMA=総合格闘技)で最適化された連中だ。

玄の動きを、いくつかは防ぎやがる。


「そら!」

リーダー格の男が、鋭いローキックを放ってきた。

玄はそれを紙一重でかわす。


「その動き、古いんだよ!」

男は、ローキックの勢いのまま、タックルに移行してきた。

古武術にはない、変則的へんそくてきな連携。


『なっ!? 妙な“手”だ!』

玄が一瞬、対応に遅れる。


ドカッ!

俺の腹に、強烈なタックルが突き刺さる。

「ぐっ……!」

吹っ飛ばされ、壁に背中を打ち付けた。


(いってぇ……! マジでヤベェぞ、こいつら!)

リーダーの男が、ゆっくりと近づいてくる。


「終わりか? 江戸時代の暗殺術(笑)ってのも、大したことねぇな」

『……小僧。ちと、力を貸せ』

玄が、苦しそうに言った。


「(力?)」

『テメェの、あの変なカラクリだ。さっきの、タックルとかいうヤツ』

「(まさか……!)」

「(玄! そいつのクセ、見切った! 右フックの後は、必ずタックルだ!)」


俺は、戦闘開始から回していたスマホの録画映像を、脳内で高速再生する。

さっき食らったタックルの瞬間を、スローで玄の意識に叩き込む!


リーダーの男が、勝利を確信して、再び殴りかかってくる。

『――なるほどな!』

男の右フックが、俺の顔面をとらえようとする。


『そこだ!』

玄は、フックをくぐり抜けるのではなく、逆に一歩踏み込んだ。

そして、懐に隠していた「黒蓮華かんざし」を逆手に握り、その丸い飾り部分を、男の脇腹わきばらに突き立てた!


ドンッ!!

「が……!?」


男の体に、詩織が仕込んだ「破魔の力」が流れ込む。

「あ……が……」

屈強なリーダーが、全身を痙攣けいれんさせ、白目を剥いてその場に崩れ落ちた。

「(やったか!?)」


『フン! 令和の“手”とやら、確かに受け取ったぜ!』

リーダーが倒れたのを見て、残りの連中が一瞬、ひるんだ。

そのすきを、玄は見逃さない。


『――おら、祭りだ!』

玄は、もう片方の得物――分銅ふんどうを振り回し、残りの連中を、まるで雑草でも刈るように、次々となぎ倒していった。

数分後。

そこには、無様に転がる用心棒たちの山ができていた。


「……はぁ、はぁ……」

俺は、全身の激痛に耐えながら、ようやく自分の体を取り戻す。


「(……勝った、のか?)」

『ああ。だが、連中、口が堅そうだ。何も吐かねぇだろうな』

その時、倒れていたリーダーの男が、薄目を開けて俺をにらみ、ニヤリと笑った。


「……これで、終わりだと思うなよ、ガキ……」

「!」

「俺たちを倒しても、ガイアフロントの“闇”は、晴らせねぇ……」

男はそう言い残し、完全に意識を失った。


俺は、その不気味な言葉に、背筋が寒くなるのを感じていた。

俺たちは、とんでもない相手に首を突っ込んでしまったらしい。


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