089_30万年前のメッセージ2/2
「キャプテン、科学者としての私の見解ですが、このデータは遥か昔に誰かが未来の特定の誰かに残したメッセージです。表層のプロテクトは時間をかければ解除可能なものでした。しかし、最後のパスワードは解除不能です。信じられないことですが、プロメテウスの演算処理能力でも解除できるのかわからない。解除の手がかりは、最終更新者の名前、そして大仰なメッセージ。まるで、特定の誰かだったらわかるだろう?と言われている気がしますね。」
博士はクラフトの顔を覗き込む
「このデータはあなたが持っていた。ご存じなんでしょう?」
ナビが代わりにこたえる
「キャプテンにそのパスワードは引き継がれていない可能性が高いですね。少なくとも、私の前任からもそのような情報は引き継いでおりません。」
「ああ、そうだな。引き継いではいない。しかしだ、俺ならわかるだろうという意図も理解できるよ」
クラフトは何故か苦笑いしている
「傭兵に過去をお尋ねするのものではないとは思いますので詳しく聞きはしません。
ただ、このパスワードは是非入力していただきたいですね」
「ああ、そうだな。依頼したのも俺だしな。」
クラフトは、入力用の操作パネルを呼び出す、クラフトの指が宙で一瞬止まる。
そして、クラフトは短い一文を入力する
「XXXXXXX」
入力した文字はマスキングされて見えなかった。
「パスワード承認。データの復号化を開始します。」
「おおっ」
様々な情報が複合化されていく
プロメテウスの無機質な声が、艦橋に広がった
直後、モニターに奔流のような情報が流れ出す。
暗号化されていた数万のデータブロックが次々と展開し、ツリー構造を形作りながら複合化されていく。
博士は息を呑む。
「これは、素晴らしい、」
ナビが複合化された情報を分析し始める。
「系統情報……文明史……移民船団の記録……解読不能とされた未知の文明の宇宙船のデータ。
クラフトヤマモトの分析結果。“個人研究”として分類されていないデータ群が複数あります。
ラベルが曖昧で、内容も……判別しづらいものが多数」
やがて、全てのデータの複合化が終わり、白衣を着た一人の男性の画像が浮かび上がる。
その顔立ちはクラフトに驚くほどよく似ていた。
ただ、こめかみにかすかな皺が刻まれ、目元には長い年月を越えてきた人間だけが持つ深い影がある
映像の中の男の声は、クラフトになぜか懐かしく響いた
「私はクラフトヤマモト。この映像を見ているということは、私がだれかも理解しているだろうね。
科学者であり移民船ネメシスの設計者、そして君が生まれることになった元凶だ。」
映像の主は自嘲気味に笑う
「このデータは航海の途中で入手した未知の文明の宇宙船を解析したデータだ。
まあ、まったく歯が立たず未来に丸投げするのだがね。
我々の設備では演算処理能力が全く足りなかったよ」
クラフトヤマモトと名乗った男性の後ろには大破した宇宙船の映像が映っている。
「推測するに、この宇宙船の動力は超ひも理論を応用したものだろう。
これと比べれば、我々の動力など子供の火遊び程度のものだ。
もし解析できたなら、好きに使うと良い。
星の海を誰よりも遠くまで探索するのも、文明の発展に邁進するのも君の自由だ。
あと、私の研究途中のデータもいくつか入れておいた。使えそうなものがあればと思ってね。」
「ナビ、そこにいるのだろう?何世代目になっているかな。
未来で生まれた私を頼むよ。きっとたまに無茶をするだろうから助けてやってほしい。
きっと我々の目指した、さらに先へ行こうとするだろうからね。」
「航海の無事を祈る」
映像はそれだけだった。




