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誰もいない宇宙船で目覚めたら最強だった件について  作者: Sora
五章 バックス星系 第21回・銀河産業技術展示会編

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57/84

056_バックス星系への跳躍

ご閲覧ありがとうございます。

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

〈シルバーナ〉は、静かにその船体をスターゲイトへと滑らせていた。目的地は、バックス星系。

年に一度の大イベント――「第21回・銀河産業技術展示会」が開催される地だ。

「スターゲイト通過まで、あと十五秒です」

艦内に響くナビの声は、いつも通り冷静だった。 

〈シルバーナ〉の船体が、淡く光るゲートの縁に触れた瞬間、宇宙がきらめきに包まれた。距離にして数百光年。だが、スターゲイトを経由すれば、その移動は“瞬きほどの一瞬”だ。

そして次の瞬間、前方の視界に広がったのは――バックス星系の恒星。その輝きに照らされた、豊かな惑星群が静かに回っていた。

「到着確認。現在地は、バックス星系第四惑星〈バックス・メイジャ〉の軌道上。目標地点に到達しました」

「相変わらずスムーズだな、ナビ」

「ご満足いただけて何よりです、キャプテン」

クラフトは、満足げに腕を組む。彼の隣には、クレアが立っていた。カテゴリ4の戦術支援AI――そして、今ではただの補助装置以上の存在だ。

「さて、ナビ。バックス星系の情報と、今回の展示会の概要をおさらいしてくれ」

「了解。バックス星系は五つの惑星を擁し、展示会は中心惑星〈バックス・メイジャ〉の地表都市〈ノイア・ヴェルク〉で開催されます。期間は四週間。実機の技術展示、商談会、デモ飛行のほか、バトルトーナメントが目玉イベントとして予定されています」

「そのバトルに出るのが、俺たちの目的ってわけだ」

クラフトはモニターを操作し、既に提出済みの大会エントリーデータを開いた。そこに記されていたのは、戦闘艇を使ったトーナメント――純粋な戦術と操縦技術を競うガチの戦いだった。

『銀河産業技術展示会・公式バトルトーナメント』要項:


●予選

・予選はシミュレーターによる模擬戦形式

・兵装は全参加者共通:ブラスター+誘導弾のみ

・搭乗艦は小型艦

・搭乗人数、予選はパイロット一人

・防御シールドは禁止

 ※予選で上位8名に入った者のみ、実機による試合へ進む

 ※実機でのバトルフィールドは当日に発表される


「参加者数の制限はなし、か。こりゃまた激戦になりそうだな」

「はい、キャプテン。現時点で登録数は二千名を超えております」

「ふむ……でも、予選はシミュレーターだ。〈シルバーナ〉を酷使せずに済む」

「予選形式に公平性を持たせるため、すべての参加者が同じ条件で戦います。操縦技術と状況判断が勝敗を左右します」

「上等だ」

クラフトはにやりと笑う。その表情に、隣のクレアがすっと視線を合わせた。

「予選用シミュレーターは、艦内に同期完了しています。キャプテンが選んだ機体仕様も、模擬戦環境に再現済みです」

「すまんな、クレア。じゃあ早速……腕試しといくか」

「お任せください。私が最初の対戦相手を務めます」

彼女の丁寧な口調と裏腹に、模擬戦の難易度は容赦なかった。バレルロール、回避機動、同時斉射。再現空間に用意された〈バックス・メイジャ〉上空を舞台に、激しい空中戦が繰り広げられる。

「うおっと……誘導弾のフェイントとは、手が込んでるな……」

「実戦での生存率を高めるため、応用パターンを盛り込んでいます」

クラフトは笑った。機体はシンプルな仕様でも、勝つには知恵がいる。そこが面白い。

数時間後――

模擬戦のログを確認しつつ、〈シルバーナ〉はバックス・メイジャの衛星軌道に接近していた。

「それで、宿泊先の手配は?」

「はい。展示会の影響で、主要都市のホテルは高稼働状態です。空室があるのは、〈スカイ・ドーム・ホテル〉のハイグレード以上の客室のみ」

「つまり、安い部屋はもうないってことか」

「はい。通常の三倍の価格ですが、安全性と設備面での優位があります」

クラフトは苦笑した。

「まあ、命を張って賞金稼ぎする身だ。投資と思えば安いか」

「予約は既に済ませてあります。角部屋、セキュリティ強化仕様です」

「さすがクレア、準備が早い」

「想定行動です。万が一にも、キャプテンの安眠を妨げたくありませんので」

「……ありがとな」

視界に広がる惑星表面では、巨大な建造物群がきらめいていた。技術と商機、そして挑戦者たちの情熱が集まる戦場。そこに、自分も立つのだ。

クラフトは静かに拳を握った。

「よし、目指すは――優勝だ」

クレアが微笑む。

「はい、キャプテン」

バックス星系の空は、すでに熱気を帯び始めていた。

お読みいただきありがとうございました!

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