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誰もいない宇宙船で目覚めたら最強だった件について  作者: Sora
四章 エクシオール星系ノバス王国編

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046_夕暮れのお茶会

ご閲覧ありがとうございます。

少しでもお楽しみいただければ幸いです。

夕暮れ時、広く開け放たれた大窓からは紫がかった空と海のきらめきが見え、静かな潮騒が遠くに届く。

華やかでありながらも王宮の格式を意識した調度品が並ぶ室内に、クラフトとクレアが案内された。

「ここが、姫様のお茶会の間か」

クラフトは軽く声を漏らし、隣のクレアにささやいた。

「格式はありますけど、なんだか落ち着ける雰囲気ですね」

クレアは椅子に腰掛けながら言った。

やがて扉が静かに開き、セシリア王女が淡い薄桃色のドレスを纏い、満面の笑みで現れた。

その微笑みはどこか輝きを含み、魅惑的でありながらも何か緊張感を孕んでいた。

「お待ちしておりましたわ、クラフト様、クレア様」

「姫様、お招きありがとうございます」

クラフトは丁寧に一礼しつつも、警戒を緩めない。

「どうぞ、ご自由におくつろぎくださいませ。今日はカジュアルなお茶会ですから、形式ばらずに」

セシリアは軽やかに身を翻し、香り高い紅茶のポットをテーブルに置く。

「私たちも多忙を極める日々ですし、こんなひとときが大切だと思うのです」

「それに、クラフト様のような“立場に縛られない方”とお話できるのは、貴重な機会ですわ」

クラフトは微かに眉をひそめた。

その言葉の端々に、ただの親睦ではない何かが潜んでいるのを感じたからだ。

「“立場に縛られない”――か」

クラフトはゆっくりと言葉を選びながら返す。

「私たち傭兵は、政治的な絡みよりも仕事の結果で評価される。良くも悪くも、そういう世界です」

「まさにその通りですわ」

セシリアの瞳が鋭く光った。

「国や派閥の思惑が絡むこの星系で、信頼できる“協力者”は欠かせません」

「けれど、王族にとっては、協力者の選択は難しいのです。信用できるけど、しがらみに縛られない方が必要で――」

彼女は言葉を切り、微笑みを保ちながらも、目には切迫した何かが宿っていた。

「……クラフト様には、ぜひ我々の側でご協力いただきたいのです」

その言葉にクラフトは一瞬たじろいだが、すぐに冷静さを取り戻し、真摯に応えた。

クラフトがやや含みを持たせて答える。

「まあ、傭兵はお金次第ですからね。……だから、正直なところ、なんとも言えません」

「他に、依頼を受ける理由や動機はありますか?」

クラフトは少し言葉を探し、

「うーん……人道的理由、義理とか、まあそんなところですかね。でも結局は報酬がなければ話になりません」

セシリアはふっと息をつき、話を変えた

……セシリアが話を変えた後、和やかな話題でしばらく会話が続く。

そしてお茶会は無難に終わった。



帰りのビークルの中でクラフトはつぶやく。

「…あの姫様、食えない奴だな」

クレアが隣で微笑みながら答える。

「間違いなく、何か無理難題を押し付けようとしてますよ」

クラフトは苦笑しつつも、その先にある“協力関係”の可能性を考え、心の中で警戒を新たにした。

「政治にとらわれない立場の人間が必要だってのは理解できるが、利用されるにしても、使うにしても、油断は禁物だがな」

その目は、これから始まる複雑な駆け引きへの覚悟を宿していた。


お読みいただきありがとうございました!

感想や評価をいただけると、執筆の励みになります。

引き続き、よろしくお願いいたします!


活動報告に朗読動画の案内も記載したのでそちらも是非ご覧いただければと思います。

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