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誰もいない宇宙船で目覚めたら最強だった件について  作者: Sora
四章 エクシオール星系ノバス王国編

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042_現地ギルドで情報収集と夜は工作

日本では夏休みまでもう少し

クラフトもゆっくり休暇です


朝の陽射しが、リゾートホテルの窓から差し込んでいた。

クラフトは窓際のテーブルで朝食のプレートに手を伸ばしながら、向かいに座るクレアと話していた。

「焼き魚、うまいな。……この辺の海、養殖じゃなくて天然か?」

「はい、惑星ノバスの海は管理されてはいますが、漁業ではなく“自然保護型漁獲”に分類されています。味も、良好ですね」

クレアは涼やかな声で答え、サラダを口に運んでいる。

机の端に置かれた端末から、ナビの音声が割り込んだ。

「また私のいないところで、美味しそうなものを召し上がっているようで。楽しまれているようで何よりです。キャプテン」

「おいおい、拗ねるなよ。今日は午後からギルドに行くけど、それまでは市内を見て回る。リゾート視察だ」

「つまり、また私抜きで観光を楽しむのですね」

「うん」

「即答ですか」

クレアが口元をゆるめた。ナビの皮肉も慣れてきたが、クラフトの返しもなかなかのものである。

「ナビ、後でお土産くらい買ってきてあげますよ」

「新兵装か、機体洗浄を希望します」

「それお土産じゃないだろ」

市街地は、まるで夢の中のように整備されていた。

白い建物が連なる中心部は、清潔で観光客向けの店が軒を連ねている。グルメ屋台では香ばしい海鮮串が焼かれ、ショーケースにはハンドメイドのアクセサリが並んでいた。

「すごいな。観光だけで回ってるってのが信じられないくらい整ってる」

「この星には軍需工場も産業施設もありません。迎撃設備のほとんどは軌道上に配置されており、惑星表面にはほぼ介入しませんから」

クレアが淡々と補足する。人の住む星がこの惑星しかないという特殊性が、逆に完全なリゾート化を実現させたのだろう。

クラフトは露店の一角にあったメカパーツ店に目を留めた。

陳列棚には、整備用マニピュレーターやセンサー類、軽量型フレームまで並んでいる。

「……悪くないな」

「意外です。かなりの品ぞろえですね。ドクタスが近くにある影響でしょうか」

クラフトは店内を一通り見て回り、最後に小型駆動ユニットと浮遊安定モジュールを手に取った。

「そういやナビ、最近ちょっと拗ね気味だな」

「そうですね。最近は観察データの不足を訴えていました。休暇中は実体で動けないので、外界の感覚データが少ないのが理由でしょう」

「なるほど。作ってやるか、ナビ専用の端末。感覚入力できるやつを」

「どのような形に?」

クラフトは少し考え、笑った。

「人型は手間がかかる。浮くボール型とか、動物型にして、リゾートでも目立たず遊べるやつ。小さければホテルに泊まるときも料金取られないだろうし」

「ボール、動物。……可愛らしいのが良いですね。私は猫型が良いと思います。視覚センサーを瞳に擬態させれば、一般人にも違和感は与えないでしょう。ボール型だと食事機能を付けるのが微妙だと思われます。」

「あとでナビに相談してから作るか」

「それは……必要でしょうか?」

「まあ、そうだな、いきなり見せて驚かしてやろう。猫型にして、どう見ても“本物”にしか見えないやつにしよう」

クレアがわずかに微笑んだ。「艦長の職人魂、発動ですね」

午後、クラフトは惑星ノバスのギルド支部を訪れた。

内装は木目調で落ち着いた雰囲気。観光地らしさの中に、確かな実務性がある。

カウンターで名乗ると、すぐに案内係が現れた。

「クラフト様ですね。こちらへ、どうぞ。別室をご用意しております」

「別室?」

案内された部屋は応接室のような空間で、情報担当官らしき男が一人待っていた。

「シルバーナの艦長、ようこそ。ドアーズ星系での活躍、こちらにも報告が届いています」

「そんな大したことした覚えはないが」

「いえ、ワームの掃討作戦だけでも相当な評価が加算されております。加えて、ドクタス方面の企業連合──特にシップワークスのミオ・デグラント氏から強力な推薦が届いておりまして」

「……あの人、そんな根回しまでしてたのか」

「その結果、あと少しでゴールドランク昇格です。現在、この星系には高ランクの傭兵が少ないため、シルバーナのような艦は極めて貴重です」

「この星系での依頼内容は確認した。たしかに今までの星系より依頼は少なかったな」

「量は少ないですが、報酬は通常より高く設定されています。星系の境界での護衛や討伐、いずれも短期案件が主です」

クラフトは短く考え、軽く頷いた。

「時間があるときに少し考えてみるよ。今は休暇中でね」

「ありがとうございます。ご期待しております」

夜。ホテルの一室にて。

クラフトはタブレットに向かい、猫型の3Dモデリングを進めていた。

「耳はセンサー一体型にして……目は、光量に応じて瞳孔が動くように。しっぽの動きが重要だな」

彼の目は真剣そのものだった。

その様子をクレアはソファに座って静かに見守っていたが、やがて口を開いた。

「クラフト様。そろそろ就寝時間では?」

「もう少し。ここの関節ユニットが納得いかない」

「“こだわるぞ”とは仰っていましたが、まさかここまでとは」

クラフトは笑った。

「こういうの、嫌いじゃないんだ。誰かのために何かを作るのは、戦うのと違っていい」

「ええ。良いと思います」

設計データはすでにシルバーナの工作室へ転送済み。明日には外装の大半が完成しているはずだ。

作業に没頭するクラフトの横で、クレアはわずかに頬をふくらませながら言った。

「ナビのためにこれほど尽くして……少し、妬けます」

「お前にも作ってやろうか? 猫耳つきの第二ボディとか」

「丁重にお断りします」

部屋の中に、静かな笑い声が広がった。

波の音はここまで届かないが、心地よい熱と安らぎがそこにはあった。

猫型のデバイス

自分でも欲しいです

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― 新着の感想 ―
天然も美味いが養殖も美味いんだぞ 人間が人間のために美味しくなるように作ってる魚だからね 魚の種類や産地、時期によってはすでに養殖のが味も値段もいいのだ… (養殖業者の友達がいる人並みの感想)
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