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誰もいない宇宙船で目覚めたら最強だった件について  作者: Sora
三章 ドアーズ星系 企業連合編

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037_宇宙生物討伐

〈シルバーナ〉のドック前に、クラフトと十五名のパイロットが集結していた。

彼らの背後には、小型高速艇が揃い、出撃命令を待っている。

時間になると、それぞれが機体へと乗り込んでいく。

レイモンド・カークは今回、ドクタス・シップワークスのセキュリティ指令室から指揮を執るため現場には不在だが、各人の動きは正確に制御されていた。

やがて、十五の機体と〈シルバーナ〉が次々と発艦し、真空の深宇宙へと飛び出していく。


航行時間、約六時間。

クラフトはレイモンドに状況確認を入れた

「指令室。通信は繋がっているか?」

通信モニターに、レイモンドの無表情な顔が映る。

背後には冷色系の照明と戦術マップが浮かび上がっている。

『ワームの活動活性化について、新たな情報はない。ただ、推定では餌の不足が主因と考えられる。小惑星帯を通過する船の数が減り、金属資源の摂取量が落ちた可能性が高い』

「なるほど。だが、それだけで急激な活性化の説明としては弱いな」

クラフトの言葉に、ナビが口を挟む。

「補足します。もし他生物を参考とするならば、子育て行動が始まった可能性があります」

「子育て?」

「はい。成長段階のワームが大量の金属を必要とするため、親が餌を探して広範囲に活動するという仮説が成り立ちます」

クラフトは眉をひそめた。真偽はともかく、論理的整合性はある。

「子育て中の生物は通常時より凶暴になる傾向が強いので要注意です」

なるほど


数時間後、隊は割り当てられた待機空域へと到着していた。

周囲には同様の小型~中型機がずらりと待機しており、その数は三百を超えている。

演算されたルートで、五十隻の無人老朽船が、小惑星帯の縁を周回している。

それらはワームを誘き寄せるための「餌」だった。

その時――。

「接近反応、三体。大型ワーム、ドクタス担当宙域に侵入しました」

ナビがアラートを上げる

「各自、目標を固定。作戦開始」

レイモンドも15機に対して指示を出す。

十五機の機体が静かに分散し、それぞれの獲物に向かって接近していく。

先手を打ったのはノア、リーニャ、カデルたち。

訓練で培った連携を駆使し、巨大なワームの進行方向を制御していく。

「キャプテン、まだ待機しますか?」

「んー、危なそうだったら助けようと思ったけど、三体とも、問題なく撃破しそうだな」

モニターに表示される15機の動きは鮮やかだった。

ノアは的確な誘導でワームの動線を読み、リーニャとカデルが高速接近からのブラスター一閃で肉を裂いていく。

やがて三体が討伐され、戦域に静寂が戻る。

「見事だな……」

「ですが、気を抜くのは早いようです」

クレアの声が冷静に告げる。

「レーダーに新たな接近反応、四体。大型ワーム。後方から接近中です」

「クレジットをもらう以上、教え子より討伐数が少ないのは、評価に響くのでは?」

ナビが早く動けとばかりに煽ってくる

「お前……メンテ後の武装、試したいだけだろうが」

「否定はしません」

「ったく……了解。最大加速で向かう」

クラフトの機体が高出力のスラスタを噴射し、漆黒の宇宙を突き抜ける。

まず、長距離からの2門のブラスターで一体の頭部を撃ち抜き、即座に破壊。

続けて、義眼と連動した照準で、新しく装備した誘導弾を発射。

「目標、ロック……発射」

30発の誘導弾は、胴体をなぞるように追尾し、全長を丸ごと焼き尽くす。

「残り二体」

巨大な体が迫る中、クラフトは絶妙なスラスター制御で躱しながら、一体をブラスターで真っ二つに両断。

最後の一体は、ノアたちが到達していた。

「撃破確認。全目標、排除」


しかし、直後、指令室からの通信が乱入する。


『緊急報告。撃ち漏らしたワームの一体が、未知の波動を発した。これに反応し、周囲の小型~中型ワームが一斉に移動を開始。待機中の船団を襲撃している』

「なんだと……?」

「攻撃力はそれほどではないですが、数が多すぎます。パニック状態に陥っています」

クラフトは苦く唇を噛んだ。

「……ああ、やっぱり簡単には終わらなかったな」

「予測不可能でしたね。やはり海賊とは違います」

クラフトは決意を込めて言った。

「レイモンド。提案がある。小型ワームどもを罠にかける。使える囮船で一カ所に誘導し、反応弾で一掃する」

『……座標は?』

「今送る。全機に伝えてくれ。航行可能な船は指定空域に向かい、ワームを誘導させろ」

指令室が黙った。十秒後、レイモンドの声が響いた。

『許可する。総司令から全機へ作戦を伝達する』

クラフトは僚機とともに先行し、囮船に反応弾を打ち込んでいく。

「ナビ、合計何発設置できた?」

「僚機の設置を合わせると150発です」

十分だ、というより少し多すぎる?

そして数分後、数百体の小~中型ワームを引き連れ、味方の宇宙船が続々とその宙域に到達した。

「ナビ、カウントダウン、20秒だ、この空域の全機へ送信しろ」

「20秒、19、18……」

味方機が全て反応弾の爆発エリアから出た途端、爆炎が闇を裂いた。

銀河の静寂が、灼熱の閃光で満たされ、小惑星帯の一角が消滅した。

クラフトはその閃光を見て思った。

ちょっと多すぎなのでは?

燃え上がる無数のワームの断末魔。

本部から通信がはいる。

「撃ち漏らしは各自で処理。状況確認急げ。被害を最小に抑えろ」

作戦開始から2時間。被害は出たものの死者はゼロだった。

当初目的の巨大化したワーム33匹は殲滅され、予定になかった小型~中型のワームも数百、もしかしたら1000近くが反応弾の爆発で殲滅された。

爆炎の余韻を残す宙域を背に、〈シルバーナ〉と十五の小型艇が星の海を静かに走る。

無線には、誰も声を発さなかった。

だが全員が、胸の中で同じことを思っていた。

反応弾の数がちょっと多すぎだったのではないかと。

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