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誰もいない宇宙船で目覚めたら最強だった件について  作者: Sora
三章 ドアーズ星系 企業連合編

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035 集中訓練(前半戦)

よくある熱血青春モノです

●ドクタス・シップワークス 訓練センターMTGルーム

金属パネルの壁に囲まれた会議室で、レイモンドはホログラムを展開し、前に立つ若きパイロットたちを見渡した。

「今日から、訓練メニューを開始する」

レイモンドの低く落ち着いた声が、部屋の空気を一変させた。

以降はクラフト教官の指示に従え。

クラフトが話し始める。

「まずは、4つの基本機動。これを確実に体に叩き込んでもらう。理解と実行、両方だ」

ホログラムに、戦術名称が一つずつ浮かび上がる。

「バレルロール。敵の弾道を回避する基本。横軸の回転だ。舵を切るタイミングと、スラスターの同時制御が命綱になる」

「インメルマンターン。急上昇、急降下からの急反転で、敵の背後を取る。速度と姿勢制御を完全に自分のものにしないと、自滅するぞ」

「スプリット。進行方向を180度変える技術だ。加速とタイミングの勝負だ」

「ジャックナイフターン。直進中に機首を反転させ、バックしながら後方を撃つ。敵に“背中”を見せている時こそ反撃のチャンスになる」

クレアが補足する。

「各技は、AI相手に再現性のあるレベルで実行できるまで、何度でも繰り返します。練習は1時間ごとに10分の休憩を挟みますが、集中力が保てない場合は申し出てください」

クラフトが頷いた。

「ここから2週間。この基本4技が合格ラインに届けば、後半の模擬戦訓練に進む。届かなければ……置いていく」

パイロットたちに緊張が走る。だが、その顔つきには、早く操縦桿を握りたいという熱意も浮かんでいた。


●1日目~4日目 シミュレーションホール

シミュレーションホールでは、15名のパイロットがそれぞれの模擬機に乗り込み、仮想空間内で訓練を開始していた。

クラフトは一人ひとりの操縦データをチェックし、必要に応じて通信を送る。

「ノア、バレルロールはスロットルの緩急でタイミングが変わる。今のは遅い。2フレーム早くしてみろ」

『了解! もう一度、行きます!』

クレアは別ラインで4人同時に指導していた。その声は柔らかくも的確で、数値と実行イメージを瞬時に結びつけるような説明だった。

「リーニャさん、インメルマンは上昇時に左舵が過剰です。反転中の角速度が落ちています。20%ほどカットしましょう」

『はい! やってみます!』

若手の中には、クレアに熱心に質問する者も現れはじめていた。中でもノアとカデルは、練習後もクレアのもとに残り、再現データを見せながら熱弁をふるっていた。

「おいおい、目的を忘れるなよ」

クラフトは遠くからその様子を見て小さく苦笑する。


●5日目 進捗確認

訓練開始から5日。クラフトとレイモンドの手元には全員分の習熟度グラフが並んでいた。

「10人は合格ラインだ。上出来だな。残り5人、こっちが問題か」

「私に任せてください。彼らの失敗パターンは共通しています。強制スラスタの扱いと、視点切り替えに戸惑っているようです」

「じゃあ、クレア組とクラフト組に分けよう。俺は、体で叩き込む、練度の向上に努めるよ」

「了解しました」

クレアのクラスに参加した5人は、3日後には全員が合格ラインに到達していた。

その結果を見て滅多に表情を変えないレイモンドが少しだけほころんでいた。


●8日目 一段落と提案

進捗報告を受けたミオ氏が視察に訪れ、ミオと話す中で提案がなされた。

「順調すぎるくらいだ。明日は1日、休みを取ってはどうか? 気分転換も必要だろう」

クラフトもクレアも異論はなかった。

「いい判断だ。休み明けから、後半シナリオに入る」

レイモンドから15名に対して1日の休暇が伝えられる


●8日目 夜の稽古

夜の訓練施設、照明は落とされ、艶消しのマットに静かな光が差し込んでいた。

トレーニングルームにはすでに三人の影があった。若手のノア、リーニャ、カデルだ。

若いながらに各チームのリーダー候補として今回の訓練に参加している。

それぞれ背格好も異なる三人が、黙々とシャドーの動きを繰り返している。

その場に、クラフトとクレアが足音を響かせて現れた。

「ほう、先客がいるな」

クラフトが肩を回しながら呟き、クレアは周囲に軽く一礼した。

「皆さん、精が出ますね」

三人は慌てて姿勢を正すが、クラフトが軽く手を振って制した。

「気にすんな。こっちはちょっと体を動かしに来ただけだ」

クレアが静かにクラフトの前に立つ。

「では、いつものように。準備はよろしいですか?」

「おう。ところで、今までの対戦成績って、どうだった?」

「私が五十二勝、キャプテンが四十四勝です」

「けっこう勝ってんだな、俺」

「ええ、私もここまで肉薄されるとは思いませんでした」

クラフトは苦笑しながら、超近接戦闘を想定した構えを取る。

「やれやれ、そりゃ光栄だ」

二人は素手での格闘を開始した。

クレアは数メートルの距離を一気に詰めて、クラフトへ容赦ない攻撃を打ち込む。

クラフトはそのすべてを直前で躱す。クレアの攻撃はまともに受ければ一瞬で骨を粉砕される。

クレアの攻撃、クラフトの回避、その全ては洗練され、見ているだけで息を呑む。

「すごい、二人とも……」

リーニャが小さく呟く。ノアも頷き、カデルは黙って拳を握る。

格闘の末、クレア3勝、クラフト2勝。


「さすがに水分が欲しくなったな。ちょっと取ってくる」

クラフトは軽く息を整えながら退室する。


残ったクレアのもとに、三人が寄ってきた。

「すごいっすね、二人とも」

ノアが言い、リーニャも同意する。

カデルが前に出る。

「クレア教官。俺ともやってもらえませんか?」

「いいでしょう。三分一本勝負で参りましょう。ちなみに、優しく教わるのと、厳しく鍛えられるのは、どちらがお好みですか?」

「決まってる、上達が早い方だ!」

「承知しました」

数分後、カデルは見事に転がされ、制圧されていた。

「反射速度と踏み込みは非常に優れています。ですが、呼吸と視線の揺らぎが大きい。相手に攻撃を悟られてしまいます。修正すれば、もっと精度の高い動きが可能です」

「やっぱすごいよ、クレア教官」

三人が口を揃えたその時、クラフトが戻ってきた。

「対人格闘の付き合いか。どうだった?」

クラフトがクレアに水を渡しながら尋ねた。

「カデルさんは伸びしろが大きいですね。上達の早い訓練を望んでおられます」

「おいおい、伸びしろで慰めるなよ……」

「でもさ、これじゃクレア教官に気に入られるのって、絶対無理だよ。なあ、ノア?」

リーニャがノアをからかう。どうやらノアはクレアが気になっているらしい。

「や、やめろよリーニャ!」

クラフトが水を飲みながら苦笑していると、クレアがふと微笑んだ。

「そうですね。もしキャプテンから一本取れるようになったら、考えて差し上げます」

「……えっ」

ノアが真っ赤になり、カデルとリーニャが爆笑する。

「では、休憩は終わりです。カデル、構えなさい。続きをやりますよ」

クレアの口調が厳しいものに変わり、全員が思った。

「えっ?」

「リーニャとノアもです。三人同時に相手をします」

「えっ?」

クレアは静かに告げた。

「カデルさんは上達志向。ノアさんは私の気を引くために、キャプテンを倒す必要があります。リーニャさんはお二人のお友達なので、参加義務があります」

「明日はお休みですし、1日休めば回復する限界までお付き合いします」

クラフトは一歩引き、ぼそりと呟いた。

「ああ、これはナビの影響だな……俺が移民船で経験した1000本ノックだ」

「クレア、先に休んでるよ。ほどほどにな」

クラフトは自分に飛び火する前に、静かにその場を後にした。


なかなか描くのが難しいけど頑張りました


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