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誰もいない宇宙船で目覚めたら最強だった件について  作者: Sora
三章 ドアーズ星系 企業連合編

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028 護衛任務の始まり

少しだけ探偵ものの雰囲気を出してみました

ミオ=デグラントは、重厚な書斎の椅子に身を沈めていた。

背後の大窓からは、夜の庭園に灯るランタンの光が揺れている。

デスクの上、ホログラムのモニターに映し出されていたのは、屋敷の遥か上空を旋回する無人偵察機の映像だった。

「監視は今も続いているか?」

通信先の部下が頷く。「はい、会長の屋敷を監視していると推測できる動きを続けています」

ミオは顎に手を当て、しばし沈黙した。

「クラフトの素性は?」

「確認が取れました。メタ王国のギルド支部にて登録された傭兵で、ランクはシルバー。確認できる戦闘記録が4案件。すべて正当な任務での交戦。疑わしい活動履歴はありません。彼の機体シルバーナは軍の放出資材を改造したもののようですが、性能は軍の機体を上回っています」

「そうか、対人戦闘はどうだ?」

「戦果映像を確認しましたが、対テロリスト戦で、対人戦を行っています。武装した4名を20秒ほどで殲滅しています。周囲の安全を考慮しての行動が多く、傭兵として信頼に値する活動を行っています」

「彼と同行する女性、クレアついては記録が少ないですが、記録を見ると、元はカテゴリ3のアンドロイドでしたが、バージョンアップを受けてカテゴリ4へ変わっています」

「人型アンドロイドのカテゴリ4?そうか、傭兵のこだわりはわからんな」

ミオは椅子の背にもたれた。

(何者かがこちらの動きを見ている。惑星ドクタスの都市圏内において、大規模な襲撃はまず不可能だ。防衛部門が黙っていないし、保安衛星網もある。問題は……この状況を誰が仕組んでいるかだ)

一瞬、家族の顔が脳裏をよぎる。カイ、エナ、ユイ。そしてセイラとルミナ。

(このまま放置すれば、狙われるのは彼らになる)

ミオは立ち上がった。

「やはり、一度話してみるか」


翌日、シルバーナ船内

クラフトとクレアがブリッジで改修見積もりを確認していると、ミオがスーツ姿で現れた。

手には分厚い資料ファイルと端末。

「見積もりが出た。最終案だ」

クラフトは受け取って中身に目を通す。

「3億5000万クレジットか。予想よりちょっと上ですね」

「機体の設計がオリジナルのため、工期と費用が想定より膨らんでいる。期間は3週間。完了後の互換性と性能は保障するよ」

「追加オプションの提案として2つだ。別料金だが、レプリケーターの設置」

「これは食料や水、酸素を原子レベルで分解・保存し、必要なときに再構成する。保存劣化がなく、艦のスペースが大幅に効率化される。導入する価値はあると思う。追加費用は3000万クレジット」

「なるほど、生命維持のためにスペースを気にしなくてよくなるのはありがたいな」

「もう一つ。生活エリアの充実化。寝具、風呂、衛生設備、その他の生活空間の刷新。これは+600万で対応可能だ」

「おまけしてくれるってのは?」

「提示金額から合計の25%を割引しよう」

クラフトは端末に視線を戻し、静かに頷いた。

「この内容なら、納得です。自分でやるより早いし、互換性も担保される。オプション含めて依頼する。」

「前金で半分、完了後に残り半分が通例だがどうかな?」

「それで問題ない」

クラフトがサインを済ませると、ナビのアイコンが点滅した。


契約を終え、雰囲気が緩んだところで、ミオが一歩前へ出た。

「クラフト、もう一件、商談をしたい」

クラフトは一瞬目を細める。「なんとなく、そんな気はしてました」

「正式に依頼を出したい。シルバーランクの傭兵、キャプテンクラフトに護衛任務を」

「内容を伺っても?」

「期間は脅威が去るまでとしたい、対象は私の家族だ。君とクレア嬢、二人での護衛で問題ない。着手金は2000万クレジット、1日あたりの報酬は80万クレジット。完了時に再度2000万を支払う。もし戦闘が発生すれば、ギルド規程に基づいて戦闘報酬を追加する」

「ずいぶん厚遇ですね、しかし船の改修が終わるまでは対応できますが、その後は何とも・・」

「改修が終わるまでの3週間だけでもいい、我々も動いてはいる」

「君のギルド戦果記録を見た。対海賊船等、対人戦での能力はとても高い。是非お願いしたい」

クラフトは、ひと呼吸おいてから訊いた。

「何から守ればいいのか、具体的に教えてもらえますか?」

ミオは目を伏せ、わずかに口元を引き締めた。

「今はまだ、確証がない。ただ、我々の情報が何者かに漏れている可能性がある。狙われている理由を探るには、時間が必要だ。その間、万一に備えたい」

クレアがクラフトに目を向けた。彼はわずかに頷く。

「二人だけでカバーできる範囲は限られている。それでもよければ受けますよ。この宇宙で出会ったのも、何かの縁でしょうから」

ミオの顔が柔らかくなり、手を差し出した。

「よろしく頼む」

クラフトも手を差し出し、強く握り返した。


ミオがブリッジを退出し、扉が静かに閉まる。

しばしの沈黙の後、クラフトが腕を組んだまま呟いた。

「不自然だな」

クレアが聞く「護衛依頼のことですか?」

「ああ。セキュリティ部門を差し置いて、知り合って間もない傭兵に家族の護衛を頼むってのは、普通じゃない」

『彼は、社内の人間を信用してませんね』

ナビが、やや抑えた声で言った。

「身内に裏切り者がいるか、それを想定しての何かの布石か」

クレアは思案げに口を引き結んだ。

「狙われる理由の調査は行いますか?護衛の依頼とは異なりますが」

「どうしよう」

クラフトの視線がモニターの外へ向かう。

「キャプテン、そこは迷うのではなくびしっと指示した方が映えると思います」

「映えるって・・そういわれても探偵ごっこなんてやったこともないぞ。まあ、疑問があるのに放置は良くない気がするから可能な範囲で調べよう」

「まず、何を狙われているのかざっくり考えてみる。海賊のような奴らは、換金性の高い、クレジット、鉱物を好む。それにこんな回りくどいやり方はしない。狙われているとすると・・」

『情報か、技術』

ナビが補完するように答えた。

「ナビ、クレア。情報を集めてくれ。俺は護衛用の装備一式を揃えておく」

「ナビは解析と推論」「クレアは人間関係を通じた聞き込みからの情報収集」

『了解。公的データベースおよび報道に出ていない非公式チャネルもスキャンしてみます』

「では、私は屋敷の人間にそれとなく聞いてみます」

「頼むよ、クレア」

おそらくミオもまだ全容を把握してはいないのだろう。

「期間は3週間。まずは、データをつないで論理的な推論を行う。

ノイズを除外していけば、どんなにありえそうにないことでも、

残ったものが真実なのだろう」

『それやるの、私とクレアですよね?』

まあそうだけどさ。

さあ、三章も動き出してきました。

今までと少し違う戦いを描きたいなーと思いました。

ミステリー、サスペンスはお好きでしょうか?

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