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誰もいない宇宙船で目覚めたら最強だった件について  作者: Sora
二章 ターリーズ星系メタ王国編

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021 レオンの帰還報告

帝国は堅苦しいのです

ソレント帝国・本星圏 親衛艦アレクトール艦内

「――以上が、今回の潜入任務の全容になります」

レオン・バルザード少佐は、直立不動の姿勢を崩さぬまま、簡潔かつ要点を押さえた口調で報告を締めくくった。

眼前のホロスクリーンには、帝国情報本部の幹部たちが映し出されている。威圧感のある軍服姿の男たちが並び、いずれも機械強化を施された冷徹な眼差しを向けていた。

沈黙を破ったのは、中央に座す情報本部総監だった。

「よろしい。敵の内部構造と支配層の断片情報、そして軌道資源ルートの現状把握……いずれも貴重な戦果だ。よくやった、少佐」

「光栄です、閣下」

レオンは無感情に近い、抑制された表情で一礼した。その顔に誇りや安堵の色はない。ただ、任務を果たした者の静かな確信だけが宿っている。

「次の任務が発令されるまでは本艦で待機せよ。肉体調整と戦術記録の同期も怠るな。それだけだ」

ホロスクリーンが消えると、艦橋には重苦しい静寂が戻った。

「……ふぅ」

ようやく吐き出した息は、わずかに冷えた空気を震わせる。それに重なるように、背後の扉が開いた。

現れたのは銀髪の青年将校――副長のゼフィリウス中尉だった。無駄のない動作でレオンに近づき、慣れた調子で声をかける。

「少佐、報告お疲れさまでした。例の書類、整えてあります。医療検査の予約も通しましたので、あとでご案内を」

「手際がいいな、ゼフィ。……だが、気を遣うな」

「お気遣いなく。任務のうちですから」

レオンは唇の端をわずかに上げた。ほとんど表情を見せない彼にしては、それは上機嫌に等しい。

ゼフィは笑みを浮かべながら、話題を変えた。

「それにしても、帝都では不穏な噂が飛び交ってますよ。“そろそろ始まる”と」

「何がだ?」

「戦争です。今年中に火蓋が切られるんじゃないかと、ささやかれてます。補給艦隊の拡充、演習の増加、艦隊再編……誰が見ても、これは“準備”ですよ」

レオンは答えず、静かに艦橋の前方へと視線を移した。装甲ガラス越しに広がる宇宙の海は、無数の光点を湛えて穏やかに脈打っている。

「……火が灯るには、まだ時間が要る。準備が整っていても、“機”が熟していない」

「やはり、そうお考えですか」

「王国はまだ本気ではない。帝国も然り。牙を剥くには、“理由”が要る」

「とはいえ、陛下のことです。“くだらない理由”でも開戦の口実にしかねませんよ」

ゼフィが肩をすくめて笑うと、レオンも小さく息を吐いて応じた。

「くだらない理由でも、勝てるなら構わん。だが――勝てない喧嘩は、我が軍の流儀に反する」

「はは、まったくです。少佐がそう仰るなら、安心して構えていられます。今年は静観、ですかね」

「静かに……牙を研ぐことになる」

ゼフィが敬礼し、軽やかな足取りで退出すると、艦橋には再びレオン一人が残った。

しばしの沈黙。彼はそっと背筋を伸ばし、背後のドアに背を向けて、再び窓の外へ目をやった。

「銀色の機体……あの加速」

誰にともなく漏れた声は、微かな熱を帯びていた。

「あれはただの傭兵ではない。手合い違いの雑兵でもない」

その動き、機体特性、戦術判断――どれも並の傭兵に収まるものではなかった。

「もう一度、見る機会があるか……?」

それは戦場か、あるいは――別の舞台か。

光を帯びた星々の中に、彼はあの姿を探していた。

土日はゆっくりストックを準備しなくては

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