020 海賊主力討伐2/2
中途半端で切るのは良くないと思い続きも投稿します。
レオンの発言は、シャア・アズナブルまたはクワトロ・バジーナを思い出してもらうとピッタリな気がします。若い人にはわからないかw
【レオン】
「追ってきます」
副長がレーダーを確認し、レオンに報告する。
追跡してくる小型艦からブラスターで狙い打たれている。
全て躱しているが、正確な射撃だった。
「来るか…銀色」
彼の指先が軽く動く。
コンソールに触れ、機体制御をマニュアルに切り替えると同時に、後方のスラスターがフルパワーで火を噴いた。
副長がレオンに聞く。
「どうされますか?」
「遊んでやるさ。……10分だけ、な。カウントダウンしろ」
機体の航跡に残る、赤い残光。海賊を騙すための外装ではあっても、その中身は帝国謹製の最新型。
コルベット級にしては異常なほど敏捷で、重力制御も高性能。
レオンは進路を変え、銀色の小型艦、シルバーナと対峙する。
【クラフト】
クラフトは追跡する機体の動きに違和感を覚えた。
「こいつ、海賊じゃないな」
3度照準内に捉え、義眼の予測を使い狙ったが、すべて外れた、いや外された。
この小型艦はまるでこちらの攻撃を読んでいたようだった。
「海賊の旗艦からの脱出を見れば、機体性能がバカみたいに高いのも確かだ。こんなの、海賊の船じゃないだろ」
クラフトはスラスターを再調整し、旋回の角度を変える。視界の端に、敵機体の赤い航跡が見えた。
「機体性能が高いのはこちらも同じだ、次で仕留める」
ブラスターの照準を一点に絞る。
息を潜め、敵の予測軌道に重ねて
「ファイア!」
だが、その瞬間に敵機はさらに加速。クラフトのブラスターは空を裂き、赤い残光のみに着弾した。
「マジかよ、これも躱すのか」
【レオン】
「惜しいな。だが甘い」
シートを深く沈ませながら、レオンは静かに息を吐いた。視界には、まだ銀色の影が写っている。
どこまでも喰らいついてくる、執拗な獣のような追尾。
(傭兵にもこんな奴がいるのだな)
「副長、状況報告。残時間は」
「残5分37秒。メタ王国側の主力が到着しつつあります」
「そろそろ決める」
レオンはミサイルランチャーを展開し、後方に散弾式の攪乱弾を投げる。センサーを攪乱し、レーダー探知を無効にする特殊装備だ。デメリットは散布した側のレーダーも使えなくなる点だ。
撤退時に散布して、追跡を妨害する時に使われる。
「さあ銀色、この一手は読めるかな」
【クラフト】
「攪乱兵器?センサーが暴れてる?!」
シルバーナのセンサーパネルが一瞬ちらつく。
攪乱弾。通常は撤退する際にばらまくのがセオリーだ。
「キャプテン、レーダー回復までに数分かかります」
「ああ分かってる、この敵は反転してくるぞ」
「クレア、レーダーは無視しろ。」
「ナビ、光学映像を360度監視、目で見て見つけろ」
「承知です」
おそらくあいつは、逃げる前に仕留めにくる。
クラフトは回避軌道を取りつつ、迎撃の準備を整える。
【レオン】
コルベット艦の重心が一瞬、浮いたような感覚をレオンは感じた。
機体を旋回させ、銀色の傭兵機に上から奇襲をかける。
傭兵機はこちらが逃げるためにレーダーの攪乱をしたと考えているはずだ。
ミサイルランチャーを後方から前方に切り替え、偏差射撃用の計算を実行。
「ミサイルで逃げ場を無くし、ブラスターで止めを刺す」
レオンの瞳は冷たく、それでいてどこか楽しげだった。
ここまでの駆け引きを演じられる相手は久しぶりだ。
【クラフト】
「敵影を確認、直上です」
ナビとクレアが同時に声をあげる。
「読んでたぜ、そう来ると思ってた」
目視。回避。反撃。すべてが同時だった。
通常の傭兵なら避けきれない。だがクラフトは違った。
センサーは死んだまま。だが彼の義眼には、二人が示す方向にわずかに機体の光が見えた。
「見えてるぜ」
シルバーナのブラスターが閃光を放つ。
しかし、敵機の爆発は確認できなかった。
【レオン】
ミサイルの発射直前、銀色の機体からブラスターが発射された。
同時にレオンは舵を切る。
「!!」
ブラスターの光は、レオンの機体のシールドに接触し、船体が激しく揺れる。
「シールド残強度45%、船体に破損なし。戦闘は10分を超えました」
副長が冷静に報告する。
「時間か、撤退する」
レオンは少し笑っていた。
【クラフト】
「逃げたな。くっそ……!」
ブラスターを放った直後、クラフトはすぐに次の一手に備えたが、敵機は攻撃してくることはなく追撃の圏外へ離脱していた。
シートに背を預け、クラフトは息を吐いた。
「クレア、あの機体のデータ、王国軍に送るときに要注意として報告してくれ」
「承知しました」
「さてさて、気を取り直して、残りの残党狩りといきますかね」
クラフトは追跡を止め、メタ王国の交戦宙域へ戻る。
海賊の残党は、もはや統率を失って散り散りに逃走していた。
シルバーナのブラスターが放たれるたびに、小型艦のエンジンが破裂し、
真空の中に火球が咲いた。強引な突撃をかけてきた敵艦を誘い込み、機体機動で翻弄しながら、着実に仕留めていく。
「これで……小型艦、7隻目。撃墜完了」
「残存艦影、全て沈黙を確認。海賊艦隊の生存反応、ゼロに近い数値です」
ナビが報告する声はいつも通りだった。
軍の司令部からは戦闘終了の連絡があり、戦闘データの提出を促された。
戦闘空域はすでに静まり返り、星々の輝きだけが、何事もなかったかのように瞬いていた。
クラフトは操縦桿を片手で支えながら、静かに目を閉じる。
攪乱兵器を駆使して襲いかかってきたあの機体。
一瞬の隙もなかった。
クラフトはモニターを切り替え、戦闘ログを巻き戻す。
赤い航跡、独特の旋回軌道、そして攪乱兵装を使った奇襲。
ブラスターを躱す反応速度は常人を越えていた。
彼はブラスターのトリガーに指を置いたまま、ふっと口元を緩めた。
「ナビ、クレア、良くやった、戦果は上々、何より生き残れた」
シルバーナは帰路についた。
2人の再会はまたいつかですね




