019 海賊主力討伐1/2
ちょっと早めに会議が終わったので1話追加
惑星から戻って数日、クラフトはブリーフィングの通達を受けた。
「来たか……」
予想通りだった。メタ王国軍が海賊のデータを分析すれば、次の一手が読めるのは当然だ。
殲滅した移動小惑星から、残存拠点の位置は割り出せる。
実際、その通達には“新たな拠点の掃討作戦”と明記されていた。
作戦開始は三日後。稼ぎ時、というわけだ。
同じ頃、別の宙域。
そこは、小惑星帯の奥深く、海賊船団が廃棄されたコロニーを拠点としていた。
大型の戦艦と小型艦、中型艦が係留されている。
「そろそろメタ王国が行動を起こす頃だな」
移動型小惑星の拠点襲撃から考えると、今日明日にもこの拠点が強襲されてもおかしくない。
レオンは冷静にモニターを睨んでいた。彼の周囲には、厳つい顔の部下が5名。
だが彼らはただの海賊ではない。
レオンの正体は、ソレント帝国親衛隊・情報部所属、エリート中のエリートだった。
メタ王国のスターゲイト奪取を狙い、密かに海賊に紛れて情報活動を行っていた。
帝国では高貴な家系の彼が行うような任務ではないが、帝国への忠誠心から志願しての行動だ。
彼専用の小型艦は、帝国謹製の高性能コルベット。
見た目は旧式の海賊船だが、性能は最新鋭。全長は95メートル、中身はモンスター級。
「引き上げろ、とのことだ」
本国からの通信は簡潔だった。レオンはそれを受け、即座に指示を飛ばす。
「離脱準備、始めろ。情報はもう十分だ。タイミングをみて本国へ帰還する」
海賊共に悟られないように離脱し、本国へ帰還しなければならない。
三日後
【クラフト】
クラフトはシルバーナのブリッジで、メタ王国軍からワープ座標の連絡を待っていた。
基本は前回の移動小惑星拠点の襲撃と同じ、ワープで距離を一気に詰めて奇襲をかける。
違うのは、今回は王国軍による基地内での戦闘はない。
「キャプテン、座標を受信、ワープ入ります」
「ワープアウト」
すでに宙域に、メタ王国軍の艦隊が展開する。
20隻のメタ王国軍の戦艦が、海賊拠点を照準に捉え、一斉攻撃を開始した。
海賊のシールドが王国軍の射撃に耐えられることはない。
13隻あった海賊の大型船は一気に半減した。
小型艦、中型艦は100以上いたものが、こちらも半減し、一斉に散開を始めた。
旗艦はまだ生きているな⋯
「クレア、旗艦への攻撃許可、確認してくれ」
「了解です。回答ありました。勝手にしろとのことです。」
「いいね」
「キャプテン、何故旗艦を先に狙うのですか?」
クレアが聞いてくる。
クラフトはコクピットでシールドを前方に集中させ、スロットルを一気に押し込みつつ答える。
「海賊もプロだ。奇襲されたら真っ先に空域から離脱を狙う。だから絶対に仕留めたい相手は、動きを予測して優先的に攻撃するのさ」
大型艦への奇襲は、突撃、そして一撃離脱が基本だ。
クラフトは旗艦へ一直線に向かいながら、搭載していた反応弾をセットする。
4発。タイミングをずらし、最初の2発でシールドを破壊、次の2発でトドメを刺す。
王国軍の攻撃でシールドが弱まっている今なら十分落とせる。
――ドンッ!
衝撃が宙域に広がる。旗艦がぐらつき、シールドが霧散した、次の瞬間2発の反応弾により船体が爆発しながら二つに折れる。
だが、着弾のわずか前に発進する機影ががあった。その機体は赤い航跡を残しつつ、急速に離脱していく。
【レオン】
メタ王国軍の攻撃が始まる少し前
レオンはブリッジにいた
「……来ましたね」
レオンは微かに笑った。コクピットに座り、モニターを見つめる。
メタ王国軍の砲撃が始まった。
レオンの小型機が収容されている旗艦は一撃で落ちることがないことはわかっていた。
乱戦に乗じて空域を離脱する心づもりだ。
「ようやくこの茶番にも終わりが見えてきた。海賊どもに気を使う必要もない」
その時、警報音。急速接近する反応。
「反応弾です!」
「ほう……なかなかやるじゃないか。発進だ、交戦はしない、即時撤退する」
レオンのコルベットが海賊の旗艦から躍り出る。
一気に加速。直後、乗船していた旗艦が、轟音と共に二つに折れた。
「どの艦が撃った?」
「はい、映像を転送します」
モニターに映し出されたのは、滑らかな銀色の機体。
「王国軍ではないな。傭兵か……単騎で戦艦を落とすとは、いい腕をしている」
「追ってきます!」
レオンの副官が叫ぶ。背後、鋭く迫る光の点が一つ。
「どうされます?」
「振り切るさ。今回は情報収集が目的だ。食らいついてくるなら、その時はまあ考えるさ」
レオンは最大速度で空域の離脱に進路を取った。




