015 ケアアンドロイドの献身
今回は突発的な対人戦闘
交易コロニー、午前。クラフトは小規模なショップや市民の往来を眺めながら歩いていた。ニュースモニターには、海賊団の映像が繰り返し流れている。最近メタ王国内で頻発していたものだ。
「捕縛された海賊の一部が、本日コロニーへ移送されました」
そんなニュースが流れていたら、突然、遠方で爆音が響いた。
空気を圧縮した衝撃波が彼のコートをはためかせる。
「今のは……爆発か?」
クラフトの視界に、義眼を通じた警報が赤く点滅する。
《ギルドからの緊急要請がコロニー内の傭兵に一斉配信されました》ナビの声が耳に飛び込む。《移送中の海賊が逃亡。現在、武装した24名がコロニー内を移動中。至急、捕縛または排除を。20名は港に向けて移動中。4名は中央病院を目指しているようです。病院には宇宙空間を航行可能な緊急搬送用シャトルがあります》
「了解した、病院へ向かう」
クラフトは、即座に周囲の状況をスキャンし、病院へと向かう。
病院では、ケアアンドロイドが子供の患者の遊具を片付けていた。年齢でいえば、10代後半に相当する女性の姿を模した彼女は、カテゴリ3のAIを搭載し、患者との心理的なケアに特化している。
だが、廊下にブラスターの銃声が響き、人々の悲鳴が院内に満ちた。アナウンスが流れる。
「武装した不審人物が病院に侵入。全病室はセイフティロックが発動しました」
しかし緊急処置室だけは対象外だ。そこで今まさに、一人の子供が治療を受けているはずだった。
ケア用アンドロイドは即座に判断し、処置室フロアへ走る。
戦闘能力は持たない。だが彼女は“ケア”する存在だった。
通路の向こう、銃を構えた男たちが駆けてくる。
病院の裏口から侵入したクラフトは、義眼のナビゲーションに従いながら施設内を進む。
「エレベーターで屋上を目指す? いや……」
義眼に映る敵の動きは、明らかに何かを狙っていた。
「まさか、人質を取るつもりか」
クラフトは階段を駆け上がり、緊急処置室の前にたどり着く。
視界に飛び込んできたのは、2人の武装犯と、彼らに立ちはだかる1人の女性。
彼女は被弾しながらも、犯人の前に立ちはだかっていた。
処置室の扉を開けようとする犯人につかみかかり、身体を盾に押し戻している。
「十分だ、下がれ」
クラフトはブラスターを構え、二名の敵を射殺。その間にもう一方で格闘を繰り広げていた犯人を近接格闘術で倒し、とどめを刺す。その間10数秒。
不思議と躊躇はなかった。これが、彼の選んだ“傭兵”としての仕事だ。
倒れ込んだ女性に近寄り、はじめて、彼女がアンドロイドであることに気が付いた。
「大丈夫か?話せるか?」
彼女はわずかに首を動かし、かすれた音声を発する。
「……子供……無事……?」
「安心しろ。お前が守った。無傷だ」
その言葉を聞いて、アンドロイドは動かなくなった。
口元には微笑みを浮かべているようだ。
しばらくして、コロニー警察と医療班が到着。病院内の負傷者はゼロと報告される。
「あなたが現場で倒した4名以外も、全て排除されました。迅速な連携でしたね」
担当者は、ギルド経由で報酬が支払われる旨を伝えた後、クラフトからある申し出を受ける。
「破損したアンドロイド、引き取ることは可能か?」
担当官は困惑しつつも「病院の所属ですので、なんとも。確認後ご連絡します」と返答した。
シルバーナのブリッジに戻ったクラフトは、ブリッジでナビとの会話する。
《対人戦闘もお見事でした。人を撃つことにも、ためらいは見えませんでしたね》
「お前の前任にそう育てられたからな」
《アンドロイドの引き取りを希望されていましたね。どうするつもりですか》
「この船、2人じゃ広すぎるだろ」
《乗員は現在、キャプテンクラフト一名ですが》
「お前、わかってないな」
彼は笑いながら、ブリッジを後にする。
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