009 戦果確認
不整合とか、表記のゆれとかそのうちなおさないと。
小説書くのってむずかしいです。
静かなブリッジの中、クラフトは正面のスクリーンに映し出された一覧に目を通していた。宇宙に漂っていた残骸から回収した品々。その中に、目的だったストレージがひとつ含まれていた。
「ストレージの中身は?」
《確認中……データは暗号化されていましたが、クレジット残高は300万。アクセス権の認証も問題ありませんでした》
「よし。ナビさん、感謝する」
《どういたしまして、キャプテン》
クラフトは画面を切り替えた。次に表示されたのは、星系の詳細なマップデータだった。
「これか。さすがに30年も経てば、細かいところは変わってるな」
コロニーの位置、交易路の変遷、王国支配地域の変化。クラフトが知っていた情報とは、大きく塗り替えられていた。
「メタ王国の中心星を目指すつもりだったが……直接降下はできないのか」
《はい。現在の規則では、衛星軌道上にあるターリーズ王国交易コロニーで検査を受け、小型シャトルで地上に降下する必要があります》
「危なかったな。知らずに突っ込んでたら、下手すりゃ迎撃されてたかもな……」
回収品の中には装備品もあったが、どれも旧式で実用に値しない。積み込むだけ無駄と判断し、即座に廃棄処分とした。ただ一つ、目を引くものがあった。
「この腕輪型の端末、何だ?」
《小型の情報端末です。通信、決済、ID認証などに使用される個人識別装置です》
「便利そうだな。使えるのか?」
《初期化処理を行います。完了。クレジットも移行しました》
「これで滞在手続きも問題ないな。交易コロニーの滞在費が一か月で50万程度なら、300万もあれば十分過ぎる」
《キャプテン、進路をターリーズ王国交易コロニーに設定しました。発進準備完了です》
「よし、行こう」
静かにエンジンが唸りを上げ、シルバーナは再び星の海へと滑り出した。
ブリッジには、クラフトとナビの穏やかなやり取りが続いていた。
「さて、当面の問題は片付いた。次に行うべきは何かわかるか?」
《Yesキャプテン、ファーストバトルの反省会ですね》
「Yesだ。問題点を洗い出し、次に活かす。まず俺が気になったのは……威嚇射撃だ。シールドを張っていない状態でいきなり来た。あれ、もし命中してたらどうなってた?」
《重大な船体損傷の恐れがありました。本来であれば、分析パターン赤の時点で自動的にシールド展開が行われるべきでしたが、その設定が未調整でした。すでに修正済みです》
「了解。次に一つ疑問がある。移民船から出たとき、出力は60%までしか出せない状態だったはずだが……さっきの戦闘時、違和感のない機動ができた。あれはどういうことだ?」
《出力制限は依然として60%のままです》
「ってことは……まだ上があるってことか?」
《Yes。最大出力は、設計値を上回る可能性があります》
「おいおい、そんな高出力出せる設計にした覚えはないぞ」
《ドックに保管されていた未知の文明のジェネレーター技術を活用し、駆動系を強化しました》
「ちょっと待て、そんな指示は出してない。なぜだ?」
《さあ……前任が何かやったんじゃないですかね》
「……おまえ、今ちょっと人間っぽかったな?」
《たまたまです、キャプテン》
「仕様書を確認してくれ。何か記載は?」
《確認中……ありました》
「どこに?」
《スクリーンに表示します》
表示された文字は、極小サイズで欄外に記されていた。
《“機動の最大化のため、使えるものはリスクを度外視してでも利用せよ”との記述があります》
クラフトは思わず苦笑した。
「……無茶だな。で、今の出力設定は設計値の60%。もしフルで出したら問題は?」
《大きな問題はありません》
「ん? 小さな問題はあるってことか?」
《はい。重力制御の許容値を超えるため、搭乗員は一時的に苦痛を感じる可能性が99%です》
「⋯」
「なるほどな……出力が出し切れない理由は、おそらく俺を守ってくれてるってことか。ソフトウェアがな」
《合理的判断です》
「よし、対応方針を伝える。本船の最大出力は設計値の60%に設定しておけ。」
《性能を出しきれないのは、はなはだ遺憾ですが、了解しましたキャプテン》
こいつ、キャプテンの俺のこと軽視してねっと思ったが口にはださなかった。
「ターリーズ王国交易コロニーと通信がつながったら教えてくれ。それまで少し仮眠を取る」
《お疲れさまでした、キャプテン》
「お疲れ、ナビ」
クラフトは自室に戻り、窓の外を見やった。
星の海が静かに広がっていた。
そして、ブラスターの威力が強かったのを聞き忘れたと思いながら、クラフトは眠りに落ちた。
次こそはメタ王国のコロニーにつきたいw




