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厨二病

しまった。どうしよう。

ーーー水トカゲをとって町に戻ったのは良いものの、あのタカがどこにいるのかわからない。

こうなれば道行くものたちに聞いてみるしかない。

「中くらいの大きさで、赤羽のタカを見なかったか?」

ミミズク「知らないな」

フクロウ「鳥探しなら"厨二病"どもに聞くと良い。あいつらは優しいからな。変わってるが。」

フクロウは「闇の使者」と書かれた看板を指差している。

「ありがとう、助かったよ。」

フクロウに礼を言い、看板の掲げられた建物へ向かう。

小窓からちらりと覗いてみると、いかにも怪しい単語が書かれた本が並んでいる。

「悪魔の召喚方法」

「邪竜の封印方法~眼~」

「眼帯のかっこいい付け方」

……本当に大丈夫なのだろうか。

少々不安を覚えながらも建物の中に入る。

シルフ「すみませーん、鳥探しをしているのですが」

カラス1「ふむ…この闇の使者を頼るとは目が高い…」

カラス2「我らの仲間に加わるのではないのか。嘆かわしい…」

カラス3「して、どのような者を探しているのだ。」

タカの特徴を伝える。

カラス2「ふむ……我らの悪魔の予言によると、彼は我らの作る魔具を買いにくるであろう。しばらく待つと良い。」

カラス3「……って、うおぉい!それ、俺の作った足輪じゃないか!そんなにボロボロにしやがって!

というかなんでタカに渡したはずなのにお前がもってるんだよ!」

シルフ「これはタカに水トカゲと交換してもらったんだ。だが水トカゲをとりにいったら、とてつもなく大きな水トカゲがいてな、そいつと戦ってきた時に壊してしまったんだ。」

とってきた水トカゲの尾を見せながら説明する。

カラス「おお!こんなにでかいのと戦ってきたのか!さぞかし俺の足輪は役にたっただろう!こんな怪物を倒すのに使われたとなれば俺も鼻が高い!で、どうだったんだ、やっぱりスパーン!と胴体を一切りか?それとも頭を一突きか?」

「壁に当ててゆっくり下りるのに使った。」

「え?」

「壁にギギギーってして減速するのに使った。」

「は?」

周りのカラスたちがクスクスと笑っている。

カラス「なんだよ、その使い方…折角戦いやすいように火の加護までつけてやったのに…」

しょんぼりとしながら話すカラスがなんだかかわいそうに思えてきた。

シルフ「へぇー。加護なんてついていたのか、知らなかった。」

カラス「おお!そうなんだよ!結構高度な魔法と奇跡論をつかっていてな!なんとこの足輪には第9魔術論と第7奇跡論の手法が合わさっていて、その地域にある魔力を集めて強いエネルギーをつくり、持ち主の活力によってそれを熱に変える仕組みになってるんだ。本来魔力から生成された熱は持ち主にも伝わって火傷の原因になるんだが、この足輪は持ち主自身の活力を使った熱だから使っても痛くなったりしないんだよ!」

シルフ「それはすごい。それで、どうすればその加護をつかえるんだ?」

カラス「こいつは魔術とかに詳しくないやつが使えるように、基本原理は加護を使っているんだ。だから、そこらの精霊やら神やらに祈ればエネルギーの通り道ができて使えるようになるぜ!」

先程の様子とは一変してウキウキとしながら話している。機嫌が良くなったようで安心した。

そういえば。

「なあ、最初の話し方はなんだったんだ?」

カラスはあわてふためきながら答える。

カラス「あ、あれは仲間内でやってる話し方なんだよ!伝統というかジョークというか!ほら、なんかかっこよさそうにきこえるだろ?」

シルフ「そうなのか…」

あまり理解できない。


ガラリ。

扉があき、タカが入ってくる。

タカ「よう!腕輪を受け取りにきたぜー、ってこの間のやつじゃないか!」

挨拶をし、水トカゲの尾を渡す。

シルフ「今度のは妙にでかくてな。尾だけだがこれでいいか?」

タカ「もちろんだ。珍しいものをありがとな!」


奥からやたら羽に艶があるカラスがでてきた。

大カラス「これが、ご注文の腕輪だ。お望み通り第11奇跡論だけでつくった、われらの技術の結晶だ。」

タカ「ありがとう。大事に使わせてもらうぜ。」

タカは腕輪をうけとり、建物から出ていった。


シルフ「なんか凄そうだな…」

その厳粛な雰囲気に思わず独り言をもらす。

カラス1「あいつはこれからクラウズの試験を受けてくるんだ。」

そばにいたカラスが答える。

クラウズの入隊試験はとても難しいと聞いている。彼もおそらく、その試験ためにとっておきの腕輪を買いにきたのであろう。

思わず彼の幸運を祈り、眼をつぶる。

ーーー(あちちっ!あついって!)

ーーー「おい!おい!お前だよ!おまえ!」

カラスにバシバシ叩かれながら目をあけると、カラスが燃えかかっていた。

シルフ「おお、すまない。」

カラス「急に祈ったりするなよ!危ないだろ!」

理不尽なことをいいながらカラスは水を被っている。

シルフ「祈りっていってもこういう祈りもカウントされるとは思わなかったんだよ、すまない。」

カラス「しかし、これは致命的な欠陥だな…作った側としても見過ごせない。少しの間こっちで足輪を預からせてくれないか、直してくる。」

足輪を渡すと、「すぐに戻ってくるから本でも読んで待っててくれ!」といい、カラスは建物の奥に入っていった。

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