目覚め
「チュンチチ」
「チュンチュンチチ」
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朝だ。起きなくては。
外から声がきこえる。
???「チュン助ー!」
ーーー「長老さま、私はチュン丸です!」
長老「ではチュン五郎、チュリンスを呼んできてくれ!」
チュン丸「はい!このチュン丸にお任せください!!」
パタパタとした音が近づいてくる。スズメのチュン丸だ。
チュン丸「おーい!シルフー!長老さまがおよびだぞー!」
シルフ「わかった!今から行くー!」
お気に入りのお守りを持って飛び立つ。
長老「ではチュン十郎、おまえに重大な任務を与えようと思う。」
ーーーゴクリ。
「それはなーーー」
「水稲の刈り取りじゃ!いつものようにチュチュッとやってきてくれ!」
ーーーいつもの畑で、もってきたお守りを翼に巻き付け、振り回す。稲が揺れ、水が弾ける。その下をすかさずくぐり抜け、水を籠に入れる。
これで今日の仕事は終わりだ。いつものように長老さまの所に籠を届けに行こう。
帰り道、なぜだか心がざわつく。体が暑い。
ーーー落ち着かない。
旅にでたい気分だ。
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シルフ「長老さま、私は旅にでます。」
長老「いってくると良いのじゃ。若者は皆旅をしたくなる時期があるものじゃ。わしも若い頃はなぜだかわからぬが旅にでたくなったものじゃ。」
ーーー思ったよりすんなりと話がすすんだ。
身支度を整え、お守りたちを持つ。長老さまがくれた少しの食糧と、薬をカバンにつめこみ、飛び立つ。
冷たい追い風が心地よい。このままどこへでも飛んでいけそうだ。
ふと、目の前に黒いもやのようなものをみつけた。何か呻いている。
ーーー目があってしまった。
もやは影となり、こちらに向かってくる。
思わず持っていたお守りを強く握りしめる。
何かが割れた音がした。
頭の中がヒリヒリして、突如文字列が頭の中に浮かんでくる。
ーーーーcharming starーー
気づけばお守りをいつものように一振りしていた。
お守りが光り、影に向かって流星のこどく飛んでいく。
光にあたり崩れ行く影の下をくぐり抜け、落ちていくお守りを捕らえる。
一連の出来事が終わり、呆然としていると、ふと風が止んだ。
疲れていたのもあり、一度近くの町によることにした。
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あたりは市場で、色んな種類の鳥たちで賑わっている。
「よう!良いもんもってんじゃねえか」
一羽のタカが話しかけてきた。お守りをチラチラみてくる。
タカ「そいつは昔クラウズたちが鉄鯨を落としたときに降ってきた、「星の欠片」ってやつだろ?そんなに綺麗に光るのはそうそう見つからないぜ?」
シルフ「いつも大事に磨いているからね。大切な人からの贈り物なんだ。」
タカ「どうりで綺麗な訳だ。これからも大事にすると良い。」
クラウズーーー名前は聞いたことがある。鳥の中でも特に強いタカやワシが集まり、危険を排除しているらしい。クラウズが総攻撃を仕掛け、激戦の末「鉄鯨」を落としたのは伝説として今も語り継がれている。小鳥は鉄鯨に食べられてしまうため、みんなが恐れていたものを、とうとう倒してしまったのだ。
タカ「おまえ、旅をしているのか」
考え事をしていると、また先程のタカが話しかけきた。
タカ「そうだ、おれは今、水トカゲを買いにきたんだが、どこもボッタクリみてえな金額でしか売ってくれないんだ。そこでだ、とっておきの足輪をやるから、水トカゲを捕まえてきてくれないか。最近は妙な生物もいて物騒だし、護身具の一つや二つ、もっていて損はないぞ?」
今思えばお守りしか護身具を持たずに村をでてきてしまった。鉄鯨が落ちてからは先程の影のように謎の生物も多くなってきている。そう考えると、悪くない提案だ。
シルフ「それじゃあ、そいつを捕まえてくるだけで良いんだな?」
タカ「そうだ。交渉成立だな!足輪は前払いでやるよ。」
そう言うとタカはどこかへとびたっていった。
足輪を受け取り、早速眺めてみる。
足輪には持ち手があり、そこを握ると刃がでてくる仕掛けになっているようだ。
なにはともあれ、早速洞窟に出発することにした。
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洞窟に入ると、じめじめとした空気が体を包む。
なにかの鳴き声も反響してきこえてくる。
水場を探し、飛び回る。
コウモリもどきはお守りでなぎはらい、蠢く草は足輪で突き刺す。
さらに進むと、ようやく水トカゲをみつけた。
ーーーしかし、何かがおかしい。大きい。大きすぎるのだ。足でつかめるはずの水トカゲが、逆にこちらが一口で食べられてしまうのではないかと思う程大きくなって、こちらを睨んでいる。
ーーー戦うしかない。
水トカゲがこちらに噛みつこうとするのをヒラリとかわし、お守りを投げつける。
ーーーcharm strikeーー
お守りは光輝きながら水トカゲの鱗に突き刺さるが、鱗の表面が少し焼けただけだ。
水トカゲが酸を体から放出する。もろにくらってしまい痛い。翼がぬれてしまって飛べなくなってしまった。落下する体からお守りが離れていく。近くの壁に足輪の刃をおしあてながら地面までおりる。足輪はボロボロになってしまった。水トカゲの尾がこちらに向かってくる。こうなれば、自分の力だけでなんとかするしかない。自分の体程ある、巨大な尾に、嘴と羽をむける。精一杯力をこめ、尾を切り上げる!
「ツバメ返し」
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目を開けると、目の前には水トカゲのシッポが転がっていた。
水トカゲは身悶え、どこかへ逃げていったようだ。
なんとか勝てたーーーその場に座り込む。
残ったのは水トカゲの尾だけだが、これだけ大きければきっと十分だろう。持ち帰る分を切り取り、残りの部分は美味しくいただく。一口たべると傷ついた体が癒えていく。たべ終わった後、お守りを拾って町にもどる。
今日はよく眠れそうだ。