1 断ち切られた薬指と婚約破棄
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「もう証拠は上がってんねんぞオイ!」
「いつまでメソメソメソメソ泣いとんじゃボケェ! ぶっ殺すぞ!」
私を恫喝したのは、魔法省長官の息子ミザネ・マジカルバナナと、王国軍最高司令官の息子、ジワラ・ニクムキムでした。
「わ、私は何もしておりません!」
「嘘つくなや!」
「いい加減にしねえと、今ここで切り捨てんぞクソアマァ!」
二人のチンピラの言葉に私が怯えていると、それまで沈黙を貫いていた私の婚約者、ウダ・ヘアン王子が、私の目の前で聖剣を抜き放ちました。
「もう良い。私がやる」
ウダ・ヘアン王子はそう言うと、聖剣の鞘を床に捨てながら、私に向かって歩いてきました。鞘が床に転がり、カランと乾いた音が響きました。
「い、いやぁ……いやぁ……! やめてください……!」
「ならば認めろ。貴様がカルピに暴力を振るっていたのだろう?」
私は、そんなことしていないのに……! しかし、そんな弁明は既に何度も行ってきたことで、もう、私には選択肢が残されていませんでした。
「認めます……! 認めますからぁ!」
「ならば、床に額を擦り付けて謝罪しろ」
私は、王子の聖剣に恐怖し、その言葉に従うことしかできませんでした。この国の正義の象徴である聖剣に恐怖を抱くだなんて、そんなの、まるで、この国の国民ではなくなってしまったかのようではないですか。
私は、床に額を擦り付け、みじめな姿を衆目に晒し、そして、言いました。
「わ、私が、カルピ・ヨウグ様を虐めました……。すべては、私の責任にございます……」
そういうと、王子はその無表情のまま、静かに溜息をつきました。
「それを早く言えば良かったものを……」
そう言って、王子は聖剣を突き下ろしました。
聖剣が突き下ろされた先は、私の左手でした。私はあまりの驚愕に何が起こったのかを理解できず、自分の左手をまじまじと見つめました。
するとそこには、私の左手と、どろりと溢れて滴る血液と、左手から分離した薬指がありました。
「あああ!!!」
薬指が、断ち切られていました。
「ああ……! ああああ……!!!!!!」
激しい痛みでした。王子に捨てられた悲しみが、掻き消されてしまうような痛みでした。
「いつまでそこにいるつもりだ。他の指も切り落とされたいのか」
「いや……! 嫌ぁぁぁ!」
そうして、私は、震える足に鞭を打ち、薬指から血を撒き散らしながら必死に逃げ出したのでした。
ありがとうございました!