04.一つの嘘はさらに嘘を呼ぶ&二人のトイレ事情
「新入生の皆さん、ご入学、おめでとうございます」
体育館で、校長が新入生歓迎の挨拶をしている。
春樹は、緊張した面持ちで、話を聞いていた。
少し前。
事前に来た連絡により、春樹と春奈は自身のクラス分けを知った。
結論から言うと、春樹は、亜紀人と同じクラスになれなかった。
しかも、亜紀人は一組と春樹は六組。
つまり、教室も離れているのだ。
ショックを受ける春樹に、春奈は一つの提案をした。
「ねぇ、春樹。私達、制服を交換しない?」
「え?」
「だから、春樹が私の制服を、僕が春樹の制服を着るの。そうすれば、亜紀人と同じクラスで過ごせるわよ」
「い、いくら何でもばれるよ」
「だーい丈夫。僕達の入れ替わりは、亜紀人にだって気付かれないのよ」
「そうかな……」
「大丈夫、僕を信じて♡」
そう言ってウインクする姉に、多少の心配をしつつ、亜紀人と同じクラスで過ごせると言う日々を予想して受け入れた春樹だった。
そう、春樹は今、亜紀人と同じクラスの列に並んでいる。
女性用の制服を着て。
もちろんスカートだ。
「あ、あいつ、ちょっと可愛くね」
「お、本当だ」
春樹に向けての声が聞こえる。
春樹の姉はとても美人だし、当然双子の弟である春樹は彼女にそっくりだ。
さらに、休みの期間中に春奈から化粧を教え込まれた春樹は、とても綺麗になっていた。
美少女、と言っていいだろう。
ちなみに、この高校はやりすぎなければ化粧は認められている。
「はぁ、やっと終わった」
春樹は入学式が終わった後、女子トイレで座っていた。
女子トイレの使い方は分かっている。
春奈に教えられて以降、立ってする事は無くなっていた。
「うん、大丈夫、大丈夫だ。ばれてない、ばれてない」
そう言って自分の心を落ち着かせる。
一方の春奈。
亜紀人や春樹とは離れたクラスで、男性の制服を着ている。
彼女もまた、トイレにいた。
当然、男子トイレだ。
「あ~、すっきりした」
春奈は立ってしていた。
ちなみに、ここはちょっと離れたトイレ。
あまり人が来ない場所にある男子トイレだ。
人がいないから大便器で座ってやってもいいのだが、練習も含めて立ってしている。
春奈は春樹に相談される前から立ってする事を勉強していたため、慣れたものだ。
便器の外に零れもしない。
とは言え、男と違い物が無いため、横から見られるとすぐにばれる。
だから、使用者がほとんどいないトイレを使っているのだ。
もっとも、ばれたら僕の物は小さいから、とか言う予定だったりする。
「楽しみだな~、今後の学生生活」
春奈はそう言って、笑った。
鼻歌も出ているのだった。