03,春樹は春奈の手のひらの上。
「まぁいいわ。春樹、あなた亜紀人と付き合いたいんでしょ?」
「な、何で……」
僕の気持ちを知ってるの?という春樹に対し、
「そんなの、お姉ちゃんなんだから気付いて当り前よ」
半分本当半分嘘である。
確かに表情とかで気づいていたが、日記でも春樹の気持ちを感じていた。
「お姉ちゃん、僕は……僕は…………」
「大丈夫、お姉ちゃんに任せなさい!」
「え?」
困惑する春樹に、春奈は立派な姉の表情を見せる。
「僕は春樹を全力でサポートする!だから、春樹は亜紀人とカップルでいなさい。もちろん、本当の事は言わずに、ね」
「で、でも……」
「これはね、神様がくれたチャンスなの。同性愛に興味がない亜紀人を同性であるあなたを好きになってもらうと言う、ね。この関係を続ければ、いつかかならず亜紀人は春樹を好きになるわ。僕が保障する」
「そう、かな……」
春奈の言葉に心が揺さぶられ始めた春樹に、彼女はさらに追い打ちをかける。
「ええ。だから、あなたは僕のふりをして亜紀人と付き合いなさい。僕も全力でサポートする。そして、僕が時が来たと思ったら、本当の事を亜紀人に言いなさい。それまでは絶対に言ったら駄目よ」
「すぐに言ったら駄目、かな。亜紀人を騙すなんて……心が痛いよ」
「駄目に決まってるじゃない。すぐに言ったら、亜紀人が僕達を嫌いになって終わりよ。いずれはどこかの女を好きになっちゃうかもしれないのよ」
「そんなの嫌だ!」
「でしょ。でも、安心して。僕が必ずあなた達二人を両想いにして見あげる!約束する!!」
そう言って春奈は春樹を抱きしめた。
「お姉ちゃん……本当に……本当に亜紀人は僕を好きになってくれる?」
「ええ、もちろんよ。僕が保障する。僕達が協力すれば、不可能なんてないわ」
「そうか、そうだよね」
そういって春樹は涙を流しながら、春奈を抱きしめた。
春奈がニヤリと笑っているのに気づかずに。
(安心して、春樹。ちゃんと両想いにさせてあげるから。その代わり、それまでは思いっきり楽しませてもらうわ)
そんな春奈の想いに気付かずに、春樹は姉の優しさに感謝するのであった。
「じゃぁ、とりあえずおじいちゃん家に行きましょ」
「え、どうして?そりゃ、中学卒業したらお祝いしたいから来て欲しい、って言われてたけど」
「付き合うための事前準備をするのよ。作戦を立てる、とも言えるわね。服も僕の服を着てくだけじゃ駄目だろうから、ちゃんと女物の服を買って、ファッションセンスも磨かないとね。今でも悪くないけど、好きな人に喜んでもらうためには、もっと勉強しないと。亜紀人に喜んでもらえる様に可愛い服を勉強しないとね」
「そっか、女物の服も買わないといけないよね」
「そうそう、お化粧の勉強も必要よ。誰かを振り向かせたいなら、お化粧だって必須なんだから」
「あ、そっか、そうだよね」
「あと、仕草もね」
「……勉強する事、いっぱいあるんだね」
困惑する春樹に、春奈は笑って言葉を返す。
「当たり前よ。安心して、こんな事もあろうかとしばらく泊まりたいっておじいちゃんに言っておいたから。向こうはむしろ大喜びだったわよ」
「わかった……お姉ちゃん、一杯教えてね」
「任せなさい!あなたを誰もが美少女にして見せるわ。あ、僕も併せて美少女にならないといけないわよね……うん、お互いに美少女になりましょう!」
「うん、頑張ろうね!」
こうして、二人は中学卒業後すぐに祖父母の家に泊まりに行った。
亜紀人には春奈からメールした。
高校の入学式に会いましょう、と。
こうして、春奈による春樹(&春奈)美少女化計画が始まったのだった。
これでプロローグは終わりです。
書けて良かった。
この作品、どうもいいタイトルが思いつかないんですよね。
次からは高校生編です。