02.姉、春奈は面白い事が大好きである。
「もー、私の制服のまま帰らないでよ。困ったじゃない」
家に帰って来た春奈の春樹への第一声はこれだった。
「お姉ちゃん、ごめんなさい。ちょっと色々あって」
「ふ~~~~ん。それってぇ~~告白された事ぉ~~?」
春奈はそう言って笑った。
「な、何で知ってるの?」
「別に~。春樹の顔を見たらそうなのかな~、って」
嘘である。
春奈が告白を知っていたのは、亜希人が告白する事を事前に知っていたからだ。
姫川 春奈は、面白い事が大好きである。
そんな彼女の最近の楽しみは、亜希人と春樹の関係だ。
春奈は亜希人に対して、幼馴染と言う感情しか持っていない。
そんな彼女が亜紀人が自分の事を好きだと知っていた。
おや?と思ったのは、亜紀人を観察していて、その表情から。
そして、確信を持ったのは、自身の前からの趣味、弟春樹の観察からだ。
正しく言えば、春樹の日記を盗み見である。
春樹は、小学生の頃から日記を付けている。
書き始めた頃は、一般的な、今日あった内容を記載している日記だった。
しかし、現在では事実と妄想が混ざり合った内容になっている。
妄想の内容、それは今日あった事を元にした、春樹と亜紀人の妄想ラブラブイチャイチャだ。
特に、妄想部分はもはや十八禁の内容になっている。
例えば、ある日の日記には、勉強しながら亜紀人にキスされて、そのままベッドに押し倒されて熱い一夜を過ごした、と書いてある。
もちろん、そんな事実はない。
単に二人仲良く勉強しただけだ。
そんな妄想日記を、春樹は書いているのだ。
そして、それを隠れて読むのが春奈の日課だったりする。
もちろん春樹は気付いていない。
そんな事を繰り返していた、中学卒業を一か月後に控えた日。
日記に書かれた内容を見て、春奈はにんまりと笑った。
その日の日記は、涙に濡れていた。
そして、要約するとこんな事が書かれていたのだ。
中学の卒業式の日に、亜紀人がお姉ちゃんに告白する。
お姉ちゃんは亜紀人の事が好きだから、きっとカップルになる。
お姉ちゃんに亜紀人を渡したくない。
こんな内容が、涙に濡れたノートに書かれてあったのだ。
(妄想を書く気力もないみたいね。はてさてどうするか)
春奈は亜紀人と付き合う気は無い。
春奈にとって亜紀人は単なる幼馴染。
それ以上でもそれ以下でもないからだ。
ちなみに、春奈が亜紀人を好き、と春樹が勘違いしてるのは、春奈のせいなのだ。
春奈は春樹が勘違いするように仕向けていた。
そう、姫川 春奈は、面白い事が大好きなのだ。
特に、恋愛ごとなんて面白い事、彼女が見逃すはずがないのである。
そして春奈は一計を案じた。
この告白の日を見越して、春奈は髪を切って春樹と同じ髪型にした。
さらに、自身の一人称を「私」から「僕」にした。
そして、卒業式の日に春奈は春樹に制服交換を提案。
見事思惑通りに事を進めたのであった。
告白シーンを陰から見ていた春奈は、計画通り、とニヤリと笑ったのだった。
久々の更新です。
忙しくて書けなくて、一話何書いたか忘れてた。