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【改稿版】骨の十字架  作者: 園村マリノ
第三章

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39/80

20XX年9月XX日

 お母さんに会いに行った。勿論僕一人で。  

 待ち合わせ場所は、お母さんが一人で暮らすアパートの最寄り駅前の小さな喫茶店だった。

 元気だったかと聞かれた。一瞬迷ったけれど、「元気だよ」と嘘を吐いた。

 お父さんはどうかと聞かれた。「元気だよ」とまた嘘を吐いた。

 今度は僕がお母さんの近況を聞くと、それなりに上手くやっているから安心してほしいと言われた。そしてその流れから、学校はどうかと聞かれた。

 とうとう聞かれてしまった……いや、本心では聞いてほしかった。この時を待っていた。

 僕はついに、クラスメートにいじめられていると打ち明け、どんな仕打ちを受けているのか、掻い摘んで説明した。

 お母さんはショックを受けているようだった。

 お父さんには言ってないのかと聞かれた。「言ってない」と答えた。

 ケーキとジュースが運ばれても、お互いすぐには口を付けなかった。

 担任の先生にはと聞かれた。一つ前と同じ言葉で答えた。

 お母さんは、一度担任の先生に相談した方がいいと言った。向こうの対応によってはお母さんも出るから。お父さんにも言っておきなさい、と。「そうする」と答えたものの、僕は内心溜め息を吐いてしまった。(なか)先生がどうにかしてくれるとは到底思えないし、とてもじゃないけれど、今のお父さんには打ち明けられそうにない。

 その後は二人でケーキを食べながら、たわいない話や、懐かしい思い出話をした。

 帰り際、お母さんはお小遣いをくれた。一人暮らしで大変だろうからと一度は断ったけれど、このぐらいの余裕はあるわよと笑って握らせてくれた。そして、また今度会おう、何かあったら一人で無理しないで連絡するようにと言われ、僕は泣きそうになった。けれど、ぐっと堪えて、笑顔で別れた。

 離れていても味方はいる。僕は一人じゃない。そう思うと、少しだけ気が楽になった。

 でも、この日記を書いているうちに、だんだん不安になってきた。

 もう二度とお母さんに会えないような気がするのは何故だろう?

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