1。
「雨……」
耳もとに流れる音。光の射し込まない窓辺のカーテン。
ベッドの上で、目が覚めた朝は、冷ややかな空気と期待してなかった雨粒の音。
「会社、行かなきゃな……」
目を擦りながら起きる。時計の針は、五時五十分くらい。
仕事の支度して、スーツに着替える。ため息は無色透明に。鏡を見たって自分の本当の気持ちなんて曇る。
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(──県立大学前のバス停は、何分発だっけ)
どしゃ降りの雨の中、傘刺して歩く。
そう言えば、今日は会社からの研修先に行かなきゃだった。何してんだろ、俺。
(──チン……。「整理券をお取りください」)
普段からバスなんて乗りなれてない。けれど、傘を畳んでから、あぁそうだったと想い出す。
(整理券……)
傘の水滴がバスの通路に落ちる。
一人用の座席に腰掛ける。タイヤの上の座席は高くて乗りにくいけど。
(「発車致します──……」)
──足もとに、傘を畳んで置く。水滴がスーツに付く。
けれど、研修だから、別にスーツなんて着て来なくても良かった。
(何やってんだろ、俺……)
窓辺に映る雨の景色。ワイパーを振る車が、水飛沫あげてすれ違う。
朝は、誰もが静かで、傘を足もとに折り畳む。
隣に立つ男性からは、雨の匂いとともに加齢臭が鼻をついた。
いつか自分もこうなるんだろうなって。生きていれば──。
「(終点……。終点──、……○○駅前。お降りの際はお足元にご注意ください……)」
車内にアナウンスが流れる。
定期券を持たない俺は、慌てて財布の中の小銭を確認する。
「足りない……」
運賃表と整理券の番号を照らし合わせ、両替が必要なことに気づき、乗客がほとんど降りた後で両替する。
(……ダダダダダ──。チャリンチャリン……)
両替された小銭を運賃箱に入れ、運転手に言葉をかける。
「あ、ありがとうございました……」
「お気をつけて」
バスを降りると、格安チケットの自動販売機のもとへと向かう。
「三ノ宮、往復チケット──1680円か……」
計算すると、200円以上は安い。研修後の缶チューハイの値段にはなる。
格安チケットを購入し、駅のホームへと向かう。
前に見た妖精たちが踊るカラクリ時計は、静かで、時計の針が7時ちょうどを指している。
「急がなきゃ……」
慌てて改札口を通り抜け、混み合うエスカレーターよりも駅の階段を、自力で駆け上がる。
「(三番乗り場に列車が参ります。ホームより内側にお下がりください──)」
──駅構内のアナウンス。どうにかどうにか、間に合った。
階段を駆け上がって直ぐの、最後尾の十二両目の車両に乗り込む。息切らせながら。
「(扉が閉まります。ご注意ください──)」
──雨でも平日の朝の金曜日は、まあまあ乗客がいた。
四人がけの座席がひとつ空いていて、そこに座る。
真向かいには、ストレートで艶のある黒髪の女性が、俯いたままイヤホンしててスマホの画面を見てる。
俺は、久しぶりの電車ともあって、窓辺に流れる雨の風景を見ていた。




