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雨……。  作者: 破魔 七歌 
特別なある日。
1/14

1。

「雨……」


 耳もとに流れる音。光の射し込まない窓辺のカーテン。

 ベッドの上で、目が覚めた朝は、冷ややかな空気と期待してなかった雨粒の音。


「会社、行かなきゃな……」


 目を擦りながら起きる。時計の針は、五時五十分くらい。

 仕事の支度して、スーツに着替える。ため息は無色透明に。鏡を見たって自分の本当の気持ちなんて曇る。





────┿┝┨>┷┛┗┣┳┫┻╋┠┯┸┥┰╂・────






(──県立大学前のバス停は、何分発だっけ)


 どしゃ降りの雨の中、傘刺して歩く。

 そう言えば、今日は会社からの研修先に行かなきゃだった。何してんだろ、俺。


(──チン……。「整理券をお取りください」)


 普段からバスなんて乗りなれてない。けれど、傘を畳んでから、あぁそうだったと想い出す。


(整理券……)

 

 傘の水滴がバスの通路に落ちる。

 一人用の座席に腰掛ける。タイヤの上の座席は高くて乗りにくいけど。


(「発車致します──……」)


 ──足もとに、傘を畳んで置く。水滴がスーツに付く。

 けれど、研修だから、別にスーツなんて着て来なくても良かった。


(何やってんだろ、俺……)


 窓辺に映る雨の景色。ワイパーを振る車が、水飛沫あげてすれ違う。

 朝は、誰もが静かで、傘を足もとに折り畳む。

 隣に立つ男性からは、雨の匂いとともに加齢臭が鼻をついた。

 いつか自分もこうなるんだろうなって。生きていれば──。


「(終点……。終点──、……○○駅前。お降りの際はお足元にご注意ください……)」


 車内にアナウンスが流れる。

 定期券を持たない俺は、慌てて財布の中の小銭を確認する。


「足りない……」


 運賃表と整理券の番号を照らし合わせ、両替が必要なことに気づき、乗客がほとんど降りた後で両替する。


(……ダダダダダ──。チャリンチャリン……)


 両替された小銭を運賃箱に入れ、運転手に言葉をかける。


「あ、ありがとうございました……」

「お気をつけて」


 バスを降りると、格安チケットの自動販売機のもとへと向かう。


「三ノ宮、往復チケット──1680円か……」


計算すると、200円以上は安い。研修後の缶チューハイの値段にはなる。


 格安チケットを購入し、駅のホームへと向かう。

 前に見た妖精たちが踊るカラクリ時計は、静かで、時計の針が7時ちょうどを指している。


「急がなきゃ……」


 慌てて改札口を通り抜け、混み合うエスカレーターよりも駅の階段を、自力で駆け上がる。


「(三番乗り場に列車が参ります。ホームより内側にお下がりください──)」


 ──駅構内のアナウンス。どうにかどうにか、間に合った。

 階段を駆け上がって直ぐの、最後尾の十二両目の車両に乗り込む。息切らせながら。


「(扉が閉まります。ご注意ください──)」


 ──雨でも平日の朝の金曜日は、まあまあ乗客がいた。

 四人がけの座席がひとつ空いていて、そこに座る。

 真向かいには、ストレートで艶のある黒髪の女性が、俯いたままイヤホンしててスマホの画面を見てる。

 俺は、久しぶりの電車ともあって、窓辺に流れる雨の風景を見ていた。







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