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かぐやと僕と本の箱庭  作者: taiyo
一年生一学期
4/4

第一話

「それでは、班決めをしましょう。同じ班になりたいなって人に、声を掛けてくださいね。男子3人、女子2人ですよ。」

「「「はーいっ!」」」


大きめに、でもおざなりに返事をすると、僕はすぐに辺りを見渡した。

だって実際、先生も言い終わったらすぐに教室を出て行ったから……ちょっと責任感が薄すぎると思う。子供にとってはいいことなのかな?

いや、ちょっといいことじゃない……そっか、幼稚園の頃は先生が決めてくれていたけれど、今度は自分で集まって決めなくちゃいけないんだ。

ん、こういう事に気づかせる意図とかがあった、とか?……ないか。


「タツくん、いっしょのはんになろーよ。」

「おう。」


意外と簡単に受け入れた彼に、ほっとする。

でもどうしよう、幼稚園から同じだった人は、タツ君しかいない……まぁ、幼稚園の時は一人も話しかけて行かなかったから、知り合いなんてのがいるわけないんだけど。

ギリギリ、男の子ならまだしも、女の子の友達なんて、まだ作ってない。なのに2人もなんて、どうしよう。


「うー……さびしい。」

タツ君曰く、友達を作る能力と言う物が壊滅的?にないらしい僕には、この数週間、本当にどうしたら良いか本当に分からなかった。

奇跡的に氷河君という友人を一人作ることができたけれど、正直、クラスになじめている気が全くしない。タツ君の事もあったし。

お父さんは、小学生でそんなの逆に珍しいなって、ちょっと面白がってたけど……僕からしたらとっても困る。


さびしい(寂しい)とかいってるばあい(場合)でもねぇだろ、おまえ。」

「そうなんだけど、でも……」


そう言われたって、僕はまだ小学一年生なんだ。友達がいなけりゃ寂しいし、悲しい。というか辛い。病んでも良い?

そう考えると、やっぱり氷河君と言う存在は奇跡だった。

まあ、謎すぎる日に謎すぎる言動で転校してきた、最近はタツ君にもちょっぴり同意できるような、本当、本当に少しだけ胡散臭い彼だけど、それでも、僕にとっては救世主に近かったと言うか。

タツ君は意外と人と話すのが得意なところがあるから、すぐに他の子たちとばかりつるむようになりそうだったし。


ああでも本当、氷河君は何で僕たちに声を掛けて来たんだろう、謎すぎる。それが分かったら、僕もそう言う自分の良い所を活かして、友達作りに励めるというものなのに。

まぁ、活かせるほどの能力も持って無いし、実際そんな物があるのかも分からないのだけど……。


「わっ!」

「ふぁっ!?……って、ひょーがくんか。ビックリした。」


そう心の中で噂していたら、それを感じ取ったかのように氷河君が現れた。

というか氷河君、気配消すの滅茶苦茶上手いと思う、初めて会った時もそうだったし……タツ君が言うまで普通に良い人かな、なんて思っていた自分が恥ずかしいくらいに、謎だらけだ。

でもまあ、やっぱり良い人のような気もする。爽やかな雰囲気で、この数週間、勉強も運動も、何でもできることが分かった。

一年生なのに、三年生の先輩に「すごい」って言われていた。

だから多分、完璧すぎてつかみどころがない、みたいな……そんな感じ。


「つーか『ふぁっ!?』ってなんだ『ふぁっ!?』って。」

「あんまふかくついきゅーしないでよタツくん……あれだよ、デリカシーがないってやつだよ。」

「あはは、たしかに(確かに)ちょっとおかしか(可笑しか)ったな。」

「ひょーがくんまで!」


僕だって『ふぁっ!?』なんて変な声を出してしまった事には動揺してたんだから、あんまり言わないでほしい。

本当なんなんだろ今の。自分でも、もっと他に驚き方があったと思う。

こないだはちゃんと『わっ』だったし。


「まぁ、いま()は『ふぁっ!?』のなぞ()はおいておくとして。」

「あ゛?おくなよ。」

「どうぞそのままおいておいて。」

「あはは、うん、おいておくとして、ふたり(二人)とも、おなじはん(同じ班)にならないか?」


そう言った彼の表情は少し硬い。

やっぱり氷河君みたいな人でも、こういう時は緊張するんだなぁって少しだけ可笑しかった。

でも、嬉しい。やっぱり友達ってすごく良いものだ。

それに、やっぱり小学校は良い所だ。寂しさがまぎれる。


「めしあ……?」

「なぜきゅう(突然)ちゅーにびょう(廚二病)なった?」

「もちろんいいよっ!」

ほんとう(本当)か!」

「うん。タツくんもいいよね?」

「……どーでも。」


心底どうでも良さそうな反応に、氷河君と二人で苦笑いすると「あとはおんなだけだな」とタツ君が言った。

僕は瞬時に苦笑いをやめた。


「どうしたんだふたり(二人)とも、きゅう()かお()()にして。」

「ナンデモナイ。」

「……そうか。」

何かを悟ったかのような表情をされて、やっぱり子供らしくないよなぁ、と、最近よく思う事を考えた。

もはや頭の中だけだけど、口癖になってきている気がする。

それじゃ、口癖っていわないのか。なんだろ、頭癖?それじゃ寝ぐせみたい。


「わぁっ!」

「ぴゃんっ!?」

「「ぴゃん????」」


するとまた突然、誰かが驚かしてきた。

僕はそんなに驚かしやすそうな見た目をしているのだろうか。いや、驚かしやすそうな見た目ってなんだ?僕には分からない。

というか「ぴゃん」をりぴーとあふたみーしないでほしい。


「……ねぇタツくん、りぴーとあふたみーって、なんかのじゅもんだっけ?」

とうとつ(唐突)にくだんねぇこときくな。」

「あ、ごめん……。」

僕が『ピーン』と、まるで真実に気づいた迷探偵みたいな顔で聞くと、呆れたような顔をされる。

そんな、無駄話をして振り返ると、そこには女の子が立っていた。

子供にしても高い声だな、なんて思ったら、女の子だったのか。少し納得した。


「えっと……なに?」

「……もしかして、まだきまってないですか?」


ふんわりとした雰囲気の女の子だった。

垂れ目のパッチリとした新緑の目は、優しく、少しだけ細められていて、愛らしい。

艶々とした絹のような髪は栗色で、風になびくと、ほんの少し金に輝いて。

長い髪を耳にかける仕草は幼いながらも美しく、まるで絵本の中のお姫様みたいだった。


「でも、そのみためでおどろかしてきたんだ……。」

「『ぴゃん』、かわいかったですよ?」

「……。」


僕は大人になるまでに何人、子供らしくない子供を見ることになるんだろう。

もう、一ヶ月に二人、あえてタツ君を入れるなら三人見た。

この子の、頭の回転が速くて、すぐに揶揄ってこれてる感じ。明らかに子供らしくない。どうしても子供らしくない。いや、こうやってすぐに悪態を心の中でつける僕だって、わりかし子供らしくは無いのだけど、それでも、この人たちよりはましな気がする。


「で、まだはん、きまってないんですね?」

「え?」

「きまってないんですね?」

「え、あ、」

「き・ま・っ・て・な・い?」

「あ……ハイ。」


「じゃあ、いっしょのはんになりましょう。」

そう言ってその子は聖女みたいな顔で笑うと、班決めの紙に、無理矢理自分の名前を付け足した。

別に、今そのことで困っていたのだから、反論することは無いのだけれど、それでも、こんなキャラの濃い子と同じ班かって、戸惑う。

タツ君も、面倒臭そうな顔をしてるし。


「そうだ、このこもいっしょでいいですか?」

「……このこ?」

「はい、このこ。」


そう言うと、彼女の後ろで不貞腐れて座っていた女の子が、むいっとこちらを向いた。

すごい目力で睨んでくる。

僕は、この後の自分の展開が、決して良いものではないことを悟った。

勿論、僕の後ろでげっそりしてる二人も。



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