表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

episode1


 前略。私、蘆名あしなみやこは幸せの絶頂から一転。今、地獄の底で電車に揺られている。


「わ、私としたことが。戦利品を無くすなんて」

「まぁ、落ち着いて。どっか置いた記憶とかない?」

「それを覚えてたら今こんなに絶望してないよぉ」

「まぁそうね」


「ごめんね、澄晴すばる。私のせいで遅くまで付き合わせちゃって」

「別にいいよ。でも今日はもう時間的に限界。明日、運営本部に連絡してみよ。じゃ、私ここで降りるから」

「また学校でね」

「うん」

 手を振る私に、澄晴は短い返事だけして手を振ると電車を降りた。


 友人と別れた電車の中。無くしたグッズのことで頭がいっぱいだ。

 今日は楽しみにしていた大好きなアニメ、「魔法少女リリス」のイベントに来ていたのだ。会場はすごい賑わいで、ショーやグッズ販売、華やかなコスプレイヤー達など、あれこれ見ているうち、どこかに置き去りにしてしまったのだろう。気づいた時には、どこに置いたのか、そもそもいつから手元になかったのかも記憶にない始末。

 こうなってしまったら、最後に行き着くのはTmitterツミッター。確率は低いけど、もうこれしか道がない……誰か心優しい人が拾ってくれていますように。私は心の中で念じ、私は今日のイベントでグッズを無くしてしまった旨を投稿をして、しばらく反応を待つことにした。


 すると、ものの一時間であっさりと私は無くしたグッズの行方を知ることができた。行方を教えてくれたのは、「ゆーり」という人だった。私と同じく今日のイベントに参加していたようだ。入口付近の柱に掛かっていたらしい。どうやらゆーりさんは持ち主にグッズを本部に落し物として届けたことを伝えるために、Tmitterで持ち主を探してくれていたそう。



『グッズはイベントの運営本部に届けたので、忘れ物として保管してくれていると思います』


『拾って下さった上ご連絡まで下さって、ありがとうございますm(_ _)m』


『いえいえ、見つかって良かったです。あと、良かったらリリスちゃん語りませんか?(`・ω・´) b』



 ゆーりさん、絶対いい人だ。そして新たなオタク友獲得。



『是非お願いしますଘ(੭ˊ꒳ˋ)੭✧』




 ゆーりさんのプロフィール画面を見てみると、巷では有名なコスプレイヤーだったよう。

 かくいう私も巷では有名な漫画家なのである。同人雑誌しか描いてないけどね。



『へぇー、やっこさんって漫画描いてるんですね!』


『はい、! コミックストアに向けて最新作の作成中です( ˊᵕˋ ;)』


『それは大変ですね(^^; それにしてもコミストで出品してるなんてすごいですね!』


『ゆーりさんも今度のコミックストアはコスプレで参加されるんですか?』


『はい、そのつもりですよ^ω^)衣装もリニューアルして気合い入れてます』


『ぜひ生で拝見させていただきたいです╰(⸝⸝⸝´꒳`⸝⸝⸝)╯』


『当日写真撮りましょ( ・ㅂ・)و 私も、やっこさんの漫画、生で拝見したいですm(_ _)m』


 ゆーりさんと写真……リリスちゃんと写真。初ツーショット。幸せすぎかよっっ。原稿の仕上げ頑張ろう。




 翌日、学校にて。

「おはよう澄晴、聞いて。昨日あの後ね、ゆーりさんって人が私のグッズ拾ってくれていたみたいなの。一緒に探してくれてありがとね。それで、ゆーりさんと今リリスちゃんトークしてるんだけどね、ゆーりさん、リリスちゃんのコスしてるの。それで今度のコミスト《コミックストア》で一緒に写真撮ることになっちゃって、もう、今、とても幸せです」

「う、ん。よかったね」

 澄晴すばるが呆気にとられていて、その時初めて自分が物凄く興奮していることに気がつき、我に返った。


「恥ずか死にたい」

「教室、私らしか居なかったんだからいいじゃん」

 澄晴は顔を両手で覆う私の頭をポンポンしながら宥めてくれている。

「廊下に人が居たかも。そもそも公衆の面前で素を晒した挙句叫び散らかすなんて、TPOのわきまえられていない民度の低いオタクそのもの」

「まぁ、でもよかったじゃん。私もリリスちゃんと写真撮らせてよね」

「それはもう、是非。ゆーりさんも良いよって言ってくれるよ、きっと!」

 胸の前でガッツポーズをする。


「そーだね。で、そのコミストまであと一週間ですが、仕上がりましたか」

「あ、あと、4ページ分の仕上げが終わってません……今日中に仕上げます」

 急に真剣になった澄晴に、私はペコペコ頭を下げた。


 放課後、私は超ダッシュで家路に着く。そして自宅に到着し、階段を駆け上がり、そのまま勉強机に向かうと描きかけの原稿を広げた。


「リリスちゃんと写真。リリスちゃんと写真。念願のツーショット」


 これを永遠呟きながらペンを走らせること数時間。描きあげた原稿の最終確認をしながら余韻に浸り、最終確認をした。


『すばる〜終わったよ!』


『お疲れ様(_´Д`)ノ~~ 今回は早く終わって良かったね』



「ほんとだよーこれで安心だよ。っと」

 メッセージを送信すると急に疲労感が襲って来て、そのまま寝落ちてしまった。


 これでもう後はコミストの日を待つだけだ。

初めまして、はるです。この度は「オタ女子とコスプレイヤーの恋」を閲覧頂きありがとうございます。これから、もっと都ちゃんたちの可愛いところや魅力をお伝え出来るよう精進します。次話も閲覧頂けると幸いです。どうぞよろしくお願い致します。


ちなみにですが、都ちゃんのTmitterでのユーザーネームの「やっこ」は、みやこ→ みゃーこ→ やーこ→ やっこ。と言った具合に、決まったようですよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ