99と100のあいだ
99と100までの道のりは近いようで遠い。
ゼロから始まってようやく今ぼくは、99まで来た。
歩いて来た道のりを振り返ると、ゼロがものすごく遠く感じる。
ぼくは、慎重な性格の為、ゼロからこつこつと確実に一歩ずつ進んで来た。
だから、ぼくを押しのけて慌てていったライバル達は、目の前のほんの小さな落とし穴にも気づかずにどんどん脱落していった。
その中にぼくのトモダチもいて助けてあげたけれど、50の辺りでズルをしていつのまにか消えてしまった。
最初100人だった挑戦者がだんだん少なくなって、今ではぼくひとり。
ここからが本当の戦い。
他人ではなく自分との戦い。
ゴールは目前。
だけどあせってはいけない。
今まで通り慎重に進めば確実に大丈夫。
そう自分に言い聞かせた矢先、
体が急に動かなくなってしまった。
どうしよう。これでは、前へ進めないではないか。
あせるな。あせるな。
何か必ずいい方法があるはずだ。
頭をからっぽにして、目をとじた。
浮かんできたのは、目の前の100という数字。
周りが早く行け!と急かしてくる。
だめだ。まだ行くときではない。
何か鼻がむずむずする。
鼻の穴に虫が入ったのか。
だけどここでくしゃみをする訳にはいかない。
たぶん、くしゃみをするといままでの99が崩れてしまう。
ぼくの慎重な歩みは、脆くて儚いのだ。
鼻のむずむずに何とか耐えた後、今度はふわふわした毛の様な物がぼくの頬に辺り何となく痒い。
この毛どけたいけれど、たぶんこれも99が崩れるな。
ああ、せっかくここまで来たのにここでくたばる訳にはいかない。
そんな時、急に風が吹いた。
い、今だ行けーーー!
どこからともなく声が聞こえる。
タイミングは急に訪れる。
何の前触れもなく。
ぼくは急いで100に向かう。
さっきまで動けなかった体が嘘のように軽くなる。
間に合うかどうかの瀬戸際。
99から100へのゴール。
ぎりぎりの瀬戸際まで必死に走り抜ける。
はたして無事にぼくは辿り着いたのか?
目を開けるとそこには、眩しいくらいの光が飛び込んできた。
「おめでとうございます!ようこそ1000の世界へ!あなたが第一号です」
あれ、おかしいな。
100を目指したのにいつのまにか1000まで来てたのか!
やっぱり目標は高ければ高いほどいいのかな。
ああ、ここからの眺めはなんて素晴らしいんだろう。
ゼロの位置がこんなにも遠く見えるなんて。
おっとっと、右足を踏み外しそうになったが何とかバランスを保つ。
小石が崖の下へ落ちてゆく。
調子に乗っては行けない。
あくまでも慎重に。道はこれからも脆く儚いのだ
さぁ、次はどこをめざそうか。
果てしない空へ向かってぼくはどこまでも登り続けるのだ。
ゴールはまだ、見えない。
たった今たどり着いた1000でさえまだほんの通過点なんだから。