第053話 「悪魔戦争」
ティグハート全体の戦力は数千人になるが少数先鋭で動くことにした。
エステルの上級の冒険者も作戦に参加してくれている。
総勢約500人。
キザンの上級門下生程度に戦えるものだけ連れて行く。
頭数だけ居ても死人が増えるだけだろう。
広場の中央の作戦参加者の周りを囲むように街中の人達も集まっている。
街中の人々全員が集まっているのではないだろうか?
広場に入りきれない人達を合わせて1万人くらいいそうだ。
演説用の高い台の上から国王ダリスが宣言する。
魔法道具だろう拡声器のようなものを使っているおかげで、無理なく遠くの人々にも声が届く。
「我々の国にグラディウムから異形の悪魔が侵略してきた。
今現在もサグパークの街が攻撃を受けている。
しかし、恐れることはない。
我々の創国の勇者 ティグハートのご子息が殲滅作戦に参加してくださる。
ご子息は先代を超える力を持たれていることが証明されている」
さすがに国王だ。演説慣れしている。
僕の力は証明されてはいないはずだけど、この演説の趣向を考えれば必要な演出なのであろう。
それとも、トトかジジが事前に何か言っていたんだろうか。
「我々は勇者と共に戦い悪魔を殲滅する。
私 ダリス・キプロスは、現ティグハート王の名の下に、キョウ・ティグハート様にこの悪魔殲滅作戦のすべてを委ねた。
皆も今後はキョウ様の指示に従ってほしい」
《《わぁあぁーーーー》》
地鳴りの様な歓声がなる。
作戦に参加する者からも街の人々からもありったけの声が上がる。
ダリスからの紹介を受けて高台に上がった。
みんな目を輝かせて僕をみている。
緊張していないと言ったら嘘になる。
けど、あまり気にならなかった。
伝えたいことを伝えるだけだ。
「キョウ・ティグハートです。
みんなに伝えたいことがある。
デモンは強いし数も多い。乱戦になるだろう。死人もでると思う。
けど、だからこそ恐れちゃいけない。
迷っちゃいけない。
一歩目が遅れることで自分の後ろの何人もの人が殺されると思ってほしい。
ためらわないこと。
これだけは皆に約束して欲しい」
《《オォ!!》》
作戦参加者から一斉に肯定の返答がくる。
僕は続ける。
「僕からも皆に1つだけ約束するね。
僕が必ず魔王を倒す!
父が創ったこの国の人達に危害を与えさせない!
約束だ!」
《《うぉぉーおぉーーぉおー!!!!》》
大地が割れんばかりの歓声があがる。
少し喋り過ぎたかな。
ティグハートを父というのはオカシイのかな?
500年前に亡くなっているわけだし。
まぁいい。
士気はすごく大切だし、これで少しでも死人が減るならそれがいい。
それになにより宣言どおり約束は必ず果たすつもりだ。
父との約束も。
父が創ったこの国との約束も。
♢
それから僕らは直ぐにサグパークへの移動を始めた。
意識を失っているトトも一緒に運ぶことにする。
何があっても直ぐ対応できるように。
エステルの街から離れても、僕らを見送る街の人々からの歓声がしばらく聞こえた。
馬で3時間程を走ってサグパーク西の森に到着する。
すでに先行していた隠密部隊は偵察を終えて僕らを待っていた。
ジャックは少し元気がないようにみえる。
けど、とりあえず無事でよかった。
そこには新たな増援も到着していた。
巨人族【ビッケゾンクラン】
ドワーフ【ダガルゴクラン】
エルフ【スティーフクラン】
ベルが調整してくれて森に集めてくれていた。
ギリギリのところで間に合った。創世の8クランが全て揃った。
それぞれ10名前後だが心強い援軍だ。
簡単に挨拶を済ませてすぐに作戦を練り始める。
これだけの人数が集まっているんだ。
デモン側もすぐに気づいて攻めてくるだろう。
先行部隊の指揮官 アリア・キプロスから偵察の報告を聞く。
デモンの戦力は100体程。
他の街を襲っている小隊もある様だけど、多くても150体程とのことだ。
デモン達はサグパークの街に7割程度、大監獄の警備に3割程度いるようだということ。
隠密部隊で1体を既に相手にしたそうだ。
単体で見回りしていた1体だったが3人で連携してなんとか倒すことができたらしい。
戦ったキプロスの隠密部隊は先鋭だけど、キザンの上級門下生程の実力だそうだ。
よし!
そういうことなら他の皆でも十分に戦える。
サグパークの街の男達は皆殺しってわけでもないらしい。
デモン達は街の女達を捕まえて大監獄へ連れて行く。
邪魔する男達や抵抗する者は殺しているらしいけど無抵抗の者はわざわざ殺したりはしないようだ。
殺さないというよりも興味がないといった印象らしいが……
監獄にも連れて行かれずに、街中に雑に監禁されている男達が相当数いるらしい。
大監獄の出入り口は東西南北に4つ。
中は大監獄というとおり無数の牢屋があるらしい。
近くの村や街を襲っては女達を攫ってはそこに集めているそうだ。
うん。大体想定通りだ。
皆疲れもあるだろうけどこのまま今夜は越せない。
この森に本陣を作る。
解放した街の人々はなるべくここに集めて守る。
本陣の防衛はダリスの指揮のもと、増援で来てくれた3つのクランに任せる。
森での戦いには非常に長けているはずだ。
それと、バーキストが指揮をとる魔法使い達と神官達も本陣に居てもらう。
デモンに魔法が有効かわからないし、防御力の低い者は連携のとれていない乱戦では死亡率が高いと考えた。
回復魔法でのケガ人の治療と魔法で本陣の設営や防御を固めるのを担当してもらう。
本隊であるティグハート騎士団がサグパークの街に入って総力戦でデモンを殲滅。
騎士団長のカルバンが総指揮をとる。
大監獄には更に先鋭だけで向かう。
遭遇したデモンは倒すが、前提として監獄の人質を解放することを目的とする。
もし逃げ出すデモンがいても追うことはしない。
正門(南門)
【僕とハクビとジジ】
北門
【キザンクラン】
ギランが指揮
西門
【ウロボロス】
ルービアが指揮
東門
【狼人族のガジェフスキークラン】
族長 ウルビが指揮
作戦の認識合わせが終わる頃、僕らの存在に気づいたデモン達が何体が森に入ってきていた。
すでにビッケゾンクランとの戦闘が始まっている。
「よし、すぐに作戦開始だ!!」




