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第044話 「お嬢様のお屋敷」

 約束どおりお菓子をご馳走になるため、僕らはルービアの家にそのまま招かれた。


 国防のトップであるシュメールの次期当主といわれるだけあって、ルービアの家は家というより屋敷と呼べるようなものであった。


 ドーサルはルービアの護衛も兼ねているらしく、同じ屋敷に部屋をもらい住んでいるらしい。


 ルービアの屋敷までの道中で、お菓子にご機嫌のハクビはすっかり打ち解けていた。


「ほらー、急ぐわよ。

 ルービア!」


 ハクビはルービアの手を引いて駆け足をさせる。


 屋敷に着くとすぐに菓子を用意され、ハクビは色んな種類のお菓子を選びながらご機嫌だ。


 ドーサルにお菓子の説明を受けている。


 食事もすぐに用意してご馳走してくれるらしい


 すこし離れたところで、僕とジャックとルービアがその光景を微笑ましく見ている。


「悪いね。

 ルービアさん。

 ハクビがなれなれしくってよ」


 ジャックは年上の女性には何故かさん付けで呼ぶ。

 ベルもそうだし。


「いや、うれしいな。

 あんな風に接してもらえるのは」


 本音なんだろう。

 うれしそうな顔をしている。


「あんな実力をもちながら普段は普通の子供なんだな。

 そして何より素直で真直ぐに育っている。

 いい家庭環境で育ったんだろうな」


「両親とおじいちゃんにいっぱいかわいがられて育てられたからね。

 それに妹も居てね、姉としてもとってもできた娘なんだよ、ハクビは!」


 僕は自分がほめられたような気がしてうれしくなって喋りすぎる。


「ところで、ルービアさん。

 さっきはあの鎧の男となんで揉めてたんだい?」


 ジャックが話を切り替えた。

 僕のテンションが高すぎたのかな……


「あの連中はウロボロスと言って、昔からエステルに居るゴロツキの集まりの傭兵団なんだ。

 最近になってあの様な重厚な鎧をつけ始め、他の有力な傭兵団に勝負を吹っかけては名をあげて、今ではエステル一番の傭兵団といわれるている」


 傭兵という感じの鎧ではなかったと思うけど。


「そのウロボロスが最近、人攫いをしている疑いがあってな、私が気にかけている行方不明の少年も奴らが攫ったのだと思っている」


 平和なエステルの街では、人攫いなんて滅多に起きないらしい。


「それで、その少年ていうのは騎士団の人間なのかい?」


 ジャックが聞いた。


「いえ、コソ泥のガキ共のひとりです」


 既にこちら側に戻ってきていたドーサルが話に割り込む。


 ハクビは準備してもらった高級な食事をうれしそうにほおばっていた。


「お嬢様はスリや泥棒等の犯罪で連れてこられる犯罪者に、子供という理由だけで情けをかけられるのです」


「ドーサル、私の話は今関係ないだろう」


「いえ、これはいい機会ですので、お二人にも聞いて頂きましょう。

 お嬢様のお考えをお二人がどう思うのかを!」


 有無をいわさぬ態度でドーサルが話始める。


 ルービアはこの件については強く言えないらしい。


「スリや泥棒で捕まった人間は私たちの施設に収監され、罪によって罰を与えられます。

 他の地方での強制労働や、百叩き、種類はありますが、子供だからと言って罰が免除されることはありません。

 しかし、こともあろうにお嬢様は子供の場合はそのまま逃がしてしまったりするのです」


「だから私だって一度話を聞いている。

 反省していたり、しょうがない理由がある者をだな。

 二度とこのような事をしない様にしっかり説教をしてから、外にだしているいるのだ」


 ルービアはバツが悪そうに反論する。


「我がティグハート騎士団は公正と規律を重んじ、その基に平等に悪を許さないからこそ、今までティグハートの秩序が保たれてきたのです。

 それが、次期シューメルの当主と言われるお嬢様が、子供だから貧乏だからで罪を免除していては国の秩序にも関わる大問題なのです。

 だから、トーマス様が当主になるべきだなんて輩が出てくるのです」


「わ、私は別に当主にこだわりがあるわけじゃない。

 別にトーマス兄様がシュメールの当主になるなら、それはそれで構わない」


 トーマスとは、ルービアの兄でシュメールの次期当主候補なのだろう。


「わかりました。当主の話は別でしょう。

 しかし、ジャック様、キョウ様からもお嬢様に言ってあげてほしいのです。

 子供達を逃がす問題をどう思われるかを」


 ジャックも僕も割と真剣に考えてしまう。

 最初にジャックが口を開く。


「俺はドーサルのおっさんの言う通りだと思うぜ。

 まぁチビ達を救うのはいいとして、ルービアさんが収監所に居なかった日に捕まった子供だっているだろう。

 その子は罰を受けるのに、たまたまルービアさんと会えた子供だけ助かるなんてやっぱり平等じゃねぇよ」


 ドーサルはウンウンと何度も深く頷く。


 次は僕の番だ。


 僕は既に何百人も人を殺している悪魔だ。

 正しさを誰かに語ることなんてできるわけがないんだけど……


「僕は……わからないな。

 けど、ルービアが助けた子供達が何かを感じて公正してやり直そうって思えるならそれは素晴らしいことだと思う。

 自分の目の見える現実だけがすべてだから。

 その時にこうなれば良いいなと思った自分の気持ちが心の底からくるものだったら、それをそのまま行動することにしてる。

 それが正しいか正しくないかは考えない。

 自分勝手だけど僕はそうしてる」


 ドーサルもルービアも僕の言葉に驚いた顔をしている。

 変な間が出来る


「まぁよ。こいつはさ。

 色々難しく考えちゃう方だからよ。

 この話はこの辺にしようぜ。ドーサルのおっさん」


 あー、ジャックにまた変に気をつかわしちゃったな……

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