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第043話 「シュメールの女騎士」

 遠くから他の騎士達が駆け寄ってくるのが見える。


「変な邪魔がはいったな。

 とにかく俺達に関わるな。

 お嬢ちゃん。いいな」


「ま、待て!!」


 大剣の男はそう女騎士に言うと、弾かれた剣を拾い上げてその場を去った。


 5人の騎士達が女騎士のところへ駆け寄る。


「ルービア様、大丈夫ですか?」


 先頭の騎士がルービアと呼ばれるその女騎士に話しかける。


「ドーサル。

 殺されかけたよ。

 正直驚いたよ」


「なんですと?!

 あの鎧の大剣の男はそこまでの使い手なのですか?」


「あんた大丈夫?

 良かったわね。命拾いして」


 ハクビが近寄ってルービアに話かける。


「なんだ、小娘。その口の聞き方は?

 ルービア様に気安く話しかけるな!」


「いいんだ。ドーサル。

 君はあの方の連れなのか」


 遠目に僕を見ながらルービアはハクビに聞く。


「あの人は私の兄よ!

 おせっかいなの」


「だから、小娘!

 まず言葉を改めろと言っているだろ!」


 ハクビに掴みかかる勢いでドーサルという大柄の騎士が怒鳴る。


「ドーサル。

 いいかげんにしろ!」


 声量はそれ程大きくないが良く通るこえでルービアはドーサルを睨む。


「彼女の言う通りだ。

 私はあの方に命を救われてるんたぞ」


「そ、そんなお嬢様が不覚をとるなんて」


 僕らが近づくと改めて挨拶をされた。


「私はルービア・シュメール。

 改めてお礼を言わせてくれ。

 先ほどは危ないところを助けてもらったこと感謝する。

 ありがとう」


 赤髪の女性はとてもまっすぐな目をしている。

 目だけで人柄が伝わってくるようだ。


「おー、シュメール言えば創生の8クランじゃないか?!」


 ジャックは驚き嬉しそうに言う。


「おれはジャック。

 こいつはキョウだ。よろしくな!」


「君は古い話を良く知っているな。

 8クランの話などもはや廃れた昔話だよ」


 キザンクランの時もそうだが、ジャックは自分がキプロスだと名乗らない。


 創生の話が大好きだからこそ、自分が王家じゃない偽キプロスだと思われるのが嫌なのかも知れない。


「なんでジャックがキョウ兄の紹介するのよ」


「こいつは恥ずかしがり屋だから、俺が代わりになのってやってるんだろ」


 いつもの様にハクビがジャックに絡む。


「私はハクビよ」


「先ほどはドーサルが失礼をした。

 しっかり挨拶しろ、ドーサル」


「私はエステルのティグハート騎士団の団長を務めております。

 ドーサル・マグナッハです。

 先ほどは失礼しました」


 バツが悪そうな40代の壮年の男が挨拶する。


「エステルの騎士団長といったら、すごい偉い人なんだね」


 僕はあまり考えずに言う。


「いえいえ、ここにおられますルービアお嬢様はシュメール家歴代でも稀にみる剣の天才。

 次期ティグハート騎士団の総団長になられるお方ですぞ」


「へぇー、あんた。

 弱いのに偉いのね」


 ハクビが悪気なく毒をはく。


 ドーサルの顔が真赤になるが、それをルービアが手で制す。


「ドーサル。

 先ほど言ったろ。

 私は命をすくわれてるのだぞ。

 弱いと言われて当然だろう」


 ルービアは全く気に掛ける様子はない。

 やはりプライドの高いお嬢様っていうわけでもないのだろう。

 人柄は目が語る。


「して、ハクビ殿。

 ハクビ殿もお兄様と同じくらい出来るのか」


 ルービアが聞く。


「まぁ、キョウ兄には敵わないけど、あんたよりは強いわよ」


 ハクビはまた自然と物怖じせずに答える。


 ドーサルはもう我慢がならない様子だ。


「お嬢様、私にお嬢様より強いと仰るハクビ殿と簡単な手合わせをさせてもらえないでしょうか」


 あー、ドーサル完全に怒ってるな……

 見た目だけ見ればハクビは小学生だからな。

 ルービアが止めようとする前にハクビが答える。


「私は別にいいけど。

 夕食が少し遅くなるわね」


「俺は別に構わないぜ。

 どうすんだ? キョウ」


 僕が少し考えていると、ドーサルがビキピキしながら申し出る。


「ど、どうでしょうか?

 お嬢様を助けて頂いているのです。

 簡単な手合わせの後は、このエステルで一番とされる菓子職人の菓子と一流の食事をご馳走します。

 王家御用達で店も開いていないので未だ皆さんは食したことがないかと」


「失礼だろ。ドーサル!!

 命を救ってもらった方々に。

 おまえがそのような条件をだせる話じゃないだろ」


 ルービアがさすがに語気を強めるが、


「それなら私が喜んで相手してあげるわよ!

 お菓子好きだし」


 ハクビは緊張感がまるでない。


「ありがとうございます」


 ドーサルは完全にきれてる。


 それでは、ハクビ殿お願いします


 2人が相対する。


「いいわよ。

 いつでもかかってきなさい!」


 ドーサルが一歩踏み出した瞬間ーー


 《ドサッ》


 ドーサルが膝をついてうつ伏せに倒れる。

 気絶している。


 ハクビが後ろにまわって首への手刀を打ち込んだのだ。



 ルービアは目を丸くしている。


 ハクビは道場でクザンを鍛えているため、加減の見極めがだいぶうまくなっていた。


 それでもドーサルは後ろに回られたことを知覚していたから中々の腕前なのだろう。


 ハクビの手加減のおかげで気絶から直ぐに目を覚ます。


 ドーサルはすぐに事態を把握したようだ。


「申し訳ないが、

 もう一度だけお願いできないだろうか」


 立ち上がったドーサルは深々と頭を下げる。


 ドーサルの顔からは作り笑いが消え変な敬語もなくなっていた。


「いいわ。

 なかなかいい顔つきになったわね。

 あんた!」


「それでは参ります」


 《ドサッ》


 まったく同じように倒されるドーサル。


 今回は全力で気を張っていたせいか体もだいぶ反応できていた。


 しかし回避まではできない。


「私が勘違いしておりました。

 ルービアお嬢様をお助け頂き心から感謝申し上げます。

 また数々の無礼お許しください」


 気絶から目を覚ましたドーサルの態度は一変した。

 一人の騎士としてハクビに最大限に敬っているのがわかる。


「別にいいわよ。気にしてないし。

 けど、あんたなかなかやるわね。

 いい反応だったわよ」


 触れることすらできていない。

 一秒も立ち合いができていないドーサルにとっては無慈悲な言葉ともとれるが、ドーサルも既にハクビの人となりがわかったのだろう。


「ありがとうございます。

 ハクビ様」


 ルービアは後ろで険しい表情をしている。

 ハクビの実力を図ることはできたのであろう。


「キョウ殿はハクビ殿よりも強いのですか?」


 呟くようにルービアが問う。


「まぁね。

 私じゃ全然相手になんないわよ」


 まぁ、相手にならないは言い過ぎだけど、確かにハクビより僕の方が強いだろう。

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