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第037話 「鬼人の少年」

 ある日の昼食時にハクビが友達を連れて帰ってきた。

 ジャックも一緒だ。


「あー、もうムシャクシャする。

 聞いてよ。キョウ兄」


「本当、面目ない」


 ジャックが元気なく言う。



 その後ろから申し訳なさそうに鬼人の子供が家に入ってきた。


 この少年はハクビの近所の友達でアモンと言う。


 鬼人族の少年だ。

 背は僕と同じくらいだが横に大きい。


 坊主で太っていて、僕のイメージだと裸の大将みたいな外見をしている。


 家が近所らしく僕らの一軒家にも何度か遊びに来たことがあった。


 鬼人族は黒髪の一族であり、一見すると人間と変わりがない。


 しかし、彼らの両目のうえオデコと髪の生え際あたりに親指大くらいのツノがある。


 角はあくまでオデコの皮膚の下にあるので、ツノと言うよりは出っ張りと表現するのが正しいかもしれない。


 鬼人はツノのある見た目だけじゃなく、人間よりも体が大きく身体能力にも優れているとされている。




 ♢




 話の経緯はこうだ。


 ジャックとハクビで街を歩いていたら、アモン少年が他の大人鬼人2人に絡まれていた。


 どうみても一方的に絡まれていたアモン少年を見てハクビが助けに入ろうとした。


 ジャックはハクビより先にアモン達の間に割って入り、大人の鬼人を懲らしめようとしたそうだ。


 しかし、闘気を使いこなす大人鬼人に返り討ちにあい、顔面に思いっきり拳をもらって倒れてしまったらしい。


 ジャックを倒されたことに腹が立ったハクビは、素早く後ろにまわり首を叩いて2人を倒した。


 しかし、闘気を纏った2人の鬼人はそれでも起き上がってきたという。



 ハクビの実力を見て勝てないとわかった大人鬼人は丁寧に事情を説明したそうだ。


 2人はキザン道場の門下生で泣き虫で弱い後輩を指導していたのだと。


【キザン クラン】創生の8クランの1つで鬼人の一族だ。


 空手の様な独自の体術を使う。


 ティグハート国で一番の武術道場として有名で体術を志すもので知らない者はいない。



 友達が馬鹿にされたと感じたハクビはまた腹を立てて、大人鬼人2人にこう啖呵をきったそうだ。


『アモンは弱くなんかない。

 現時点でもあんた達なんかより強いわよ!』


『それはちょうど良い。

 2週間後に私とアモンの公開試合があります。

 そこでそれを証明してもらいたいものですな」


 2週間後に道場の公開試合があり、大人鬼人の1人とアモン少年が立ち会うことになっているらしい。


『の、望むところよ!』


 こうして大風呂敷を広げたハクビがアモン連れて家へ帰ってきたのだ。

 アモンを強くする相談を僕にするために。




 ♢




「もともとアモンがあいつらにナメられてるからこうなったんでしょ!」


 このアモンという少年はすごい量の闘気を持っているのがわかる。

 制御できずにまき散らしているが、サトリーク大陸に来て僕ら以外では1番じゃないだろうか。


「だけどハクビちゃん。

 オラ、うまく力つかえなくて……」


 アモン少年はのんびりした性格のようでゆっくり喋る。


「だからいつも言ってるでしょ、アモン。

 あんたはすごい闘気をもってるんだって。

 そのキザン道場ってとこでも闘気使う訓練してるんでしょ?

 ナメられて絡まれてる様じゃ、あんたが守りたいチビ達は守れないのよ!」


 アモン少年はチビ達を守ったりするらしい。

 子供の世界はとっても残酷でいじめっ子はどこにでもいるのだろう。


「それは嫌だな」


 アモン少年は悲しい顔をする。

 こんなノホホンとした性格をしているのに、しっかり感情のある顔をする。

 何か具体的に思い当たる話があるのだろう。


「だからあたしが相手してやるから、全力でやってみろって言ってるでしょ!」


「けど、もしハクビちゃんケガしたらオラ嫌だ。

 道場で1回変なふうになって、組手の相手を大ケガにさせたことあるんだ。

 オラがうまく闘気使えないから……」


「あたしがあんたの攻撃でケガするわけないでしょ。まったく。

 まー、キョウ兄、こんな感じなのよ。

 だからちょっと修行を見てやってほしいのよ」


 確かに闘気をコントロールできるようになればこの子は化けるだろう。

 なんてたって持っている闘気量が膨大だ。


「お、お兄さん。

 は、初めましてアモンです。

 ハクビちゃんからお兄さんはすごい人だって聞いてます。

 オラ、変わりたいです。守れないのは嫌なんです。

 よろしくお願いします」


 改めて僕の方を向いたアモンが緊張しながらも丁寧に挨拶する。


「アモン、あんた余計なこといわなくていいんだからね」


 ハクビの顔が少し赤い様に見える。


 お兄さんか……

 男の子から言われると、なんかザワザワするな。


「まぁいいよ。

 妹の頼みは断れないし、

 僕の大親友も関わっているみたいだし」


 ジャックは僕の発言にリアクションしない。

 あれ? だいぶ落ち込んでいるようだ。

 こっちのケアが最優先かもしれない……


 アモンは嬉しそうな顔をして、しっかり起立の姿勢をとってから頭を深く下げる。


「よ、よろしくおねがいします」

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