第024話 「ラキの村」
子供達を馬車に精一杯詰め込んで移動を開始する。
安心したのか小さい子のうち何人かは泣きだしてしまった。
それを少し年上のお兄ちゃん・お姉ちゃんたちがあやしている。
リーダー格の少年は【ラキ】と言ってつい先日13歳になったらしい。
しきりに僕らに話しかけてくる。
どこから来たのか?
どうやって自分達を助けてくれるのか?
ラキなりに僕らのことを信用できるのか再確認してるのであろう。
この少年盗賊団の行動も基本的にはラキの一存で決まるらしい。
僕らをとりあえず村まで案内するという判断もラキが決めた。
周りの子供達はそれに異を唱えることなく従っていた。
村までの道のり。
ラキはジャックの隣に座り質問攻めにしていた。
ジャックがいきない雰囲気を変えて話し始める。
「なぁ、ラキ。おまえはがんばってるよ。
けど、今回の盗賊の計画。
本当にそれしか手がなかったのか?」
「本当にどうしようもなかったんだよ。
親たちは畑を立て直そうとがんばってる。
だけど、俺達子供達は何もすることができないんだ」
ラキは必死に説明する。
「親たちは少ない食料を俺たちに食べさせて自分達は食べないんだよ。
大人たちはどんどん弱っていくし、ついに畑仕事中に倒れる人も出てきたんだ。
だから、俺ら子供達だけでもなんとかしようって思ったんだ。
だから、俺、だから」
ジャックはとても厳しい表情をしている。
「じゃあ、なんでお前一人でやらないんだ!」
とても強い口調でジャックが言う。
「けど、俺」
ラキは小さい声で答える。
「言い訳するな!
いいか、ラキ。
お前は自分のしたことを未だわかっていない。
村を救いたい気持ちはわかった。
お前自身は死ぬ覚悟もあって盗賊やったってのもわかる。
けど、自分より年下の子供達を連れてきたのが俺にはどうしても許せねぇ」
「ジャック、そんなこと言わなくてもいいだろ。ラキだって必死で」
あまりに強く言うジャックを止めようとする。
「いいんだ。キョウは黙ってろ」
ジャックは僕が口を挟むことを許さない。
「ラキ、他のチビ達はお前を信用してる。
だから、お前に従って震えながらでもついてきてるよ。
けど、だからこそだ。
そんな自分を信用してるチビ達に武器を持たせた。
生きるか死ぬかの世界に立たせた。
下策中の下策だよ」
「兄ちゃん……」
ラキは泣きそうだ。
「お前は結局自分のことしか考えてねぇんだ。
村を救いたくてどうしようもない。
だから、自分の為に一番手っ取り早い手段に飛びついたんだ」
ジャックの説教は止まらない。
「あれが俺たちじゃなくて悪い奴だったらどうだ。
何人かは殺されるぞ。
そして何人かは奴隷として攫われるかもしれない。
全部お前のせいだ。
お前が殺すんだ。
そして後悔するんだ」
「ヒック、ヒック」
ラキは静かに泣きだしていた。
けど僕もベルも止めなかった。
ジャックは別に怒りに任せて怒鳴り散らしてるんじゃない。
どうしても必要だと思ったから言っている。
そのぐらいを図れるくらいには僕らはジャックの事を理解していた。
ジャックは基本的に冷静で常に自分がどう動くべきかを考えて行動する。
「お前は頭のいい奴だ。
他の手はなかったのか?
お前一人で町でスリはどうだろう?
せめて年長組だけで行動したらどうだったろう?
物乞いはどうだ?
花でも摘んで売ってみたらどうだろうか?」
ジャックは色んな案を出す。
「どれもひでぇ案だな。
リスクもあるし、成功してもたいした金にもなんねぇだろう。
だけどなお前の盗賊団よりは何倍もましな選択だ。
お前はこれからもその選択をしてチビ達と一緒に大人にならねぇといけねぇだろ。
だからな、今度からはもっともっと考えて行動しろ」
「うん。ヒック。わかったよ。兄ちゃん」
ジャックの説教も終わってから、しばらくの間ラキは泣きやまなかった。
泣きやんだあとにジャックと距離を置くと思ったら逆にベッタリになった。
僕はその理由にすぐ気づく。
ちゃんとラキに伝わったんだ。
ジャックの説教は思いやりなんだって。
とっても暖かいんだって。
それからラキは僕らの身の上を聞いたりするのをやめた。
13歳の年相応の少年の様に自分の話をする様になった。
ラキの家系は代々農村部の村長をしている。
しかし、父親が数年前になくなってからは母親が農村村の村長として村をまとめているらしい。
強くなりたくて木の棒を振り回して修行していること、
ウサギを仕留めて母親に褒められたこと、
ラキは取り留めなく話す。
ジャックもいつもの調子に戻ってその話をうれしそうに聞いている。




