表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/55

第022話 「馬車の旅」

第3章突入です!

今回から小説のタイトルを変更しました!

オラウータン母親はサル母親に変更になりました。

大幅な変更……でもないか?!

 ザヌースを出て新たにベルを加えて3人で馬車を走らせる。


 馬車はジャックが御していたが、しばらくして僕が交代を申し出た。

 僕は初めてだったがすぐにイメージ通り馬を御せる様になった。


「もう驚くのはやめるよ。

 なんでもできるもんな。お前。

 もしかして、ベルさんも馬を御せるのか?」


「あたりまえでしょ。

 そんなに難しいことでもないでしょ」


「へいへい。そうだな」


 ジャックは苦笑いをしながら肩をすくめる。


 ジャックはベルの事をベルさんと呼ぶようになった。


 エルフのベルは見た目二十代中盤にみえる。


 正確な年齢は教えてくれなかったけど、実際はもっと年をとっているのだと思う。


 撲は『さん付け』で呼ぶと仲良くなれない気がしたから、そのままベルと呼ぶことにしている。


 一方、ベルは僕のことをキョウ君と『くん付け』で呼ぶ。


 ジャックのことは、そのままジャックと呼ぶのに。

 少しうらやましいかも……


 僕はグラディウム大陸についてベルに聞いてみた。


「グラディウム大陸ね。さすがに私も行ったことがないわ。

 本当に存在するのかもわからないわ。

 けど大昔に赤目の悪魔が魔獣を連れてサトリーク大陸を侵略したって話は確かに聞いた事があるわね」


 ほんの少しだけどベルの雰囲気が変わったのが分かった。


 グラディウム大陸に何か特別な思いがあるのかもしれない。


 ジャックが出生や故郷について聞くと、その話題も避けている様に見えた。

 ベルはベルで色々事情があるのだろう。


 ベルはサトリーク大陸の色んな場所に行ったことがあるらしい。


 どこの街の何がおいしいとか、あそこの景色はすばらしいとか、そういう話はおもしろおかしく話してくれた。


 その話をジャックも楽しそう聞いている。




 ♢




 道中に小さな街があるとそこで宿をとる。


 3人で旅を始めた当初に部屋割りについて話し合いがあった。


「さすがにベルさんと一緒に俺らが寝るって言うのはまずいんじゃねぇか?」


「お金もないこのパーティでわざわざ何の意味があるの?

 もしかしてジャックは、私が部屋で一緒に寝てると何か困ることがあるのかしら?」


「ば、バカ、別にそんなことねぇけどよ。

 キョウが変に意識しちゃうんじゃなぇかな? って思ってだな」


「僕は一緒で問題無いよ。

 もし何かあった時も纏まって動きやすいし」


「じゃぁ、決まりね」


「あぁ。わかった、わかった。好きにしろよ!」


 僕とベルはジャックを見てクスクス笑う。


 今では二段ベッドが4つあるような簡単な作りの部屋に泊まる様にしている。


 宿に泊まった時は決まって三人で酒場にいく。


 酒場へはもちろんお酒を飲みに行くんだけど情報招集の意味合いも強い。


 僕らみたいに街を渡り歩いている商人や冒険者のような人達が集まるので色んな情報が聞ける。


 あの山には最近山賊が多い。

 あの街は最近物価が高い。

 どこの宿の受付が可愛い。


 酒飲みの噂話程度の話も多いけどそれなりに有用な話も多い。


 僕は初めてののエール以来、割とエールが嫌いじゃなくなっていた。


 苦いけどその喉ごしと少しばかりの高揚感が心地良かったりする。


 そして酒場の主役はベルだ。


 ベルは普段はクールな要素が強いのだが、お酒にはしっかり酔っつぱらう


「男でね〜、1番ダメなやつははっきりしない奴よ。

 小さい事をうじうじ気にして、はっきり自分の気持ちを伝えられない。

 男は黙ってついて来い!って、女の子の手を引っ張るべきよ。

 そうじゃなきゃ男じゃないのよ!」


 酔ったベルはこの手の話を数回はする。


 なにか過去にあったんだろう。


「少年達はもう成人男子でしょ?

 思い人の一人や二人いるんじゃないかしら?

 ねぇ。ジャック?」


「バ、バカ。

 俺はそういう女だとかそういうのには興味がねぇんだ。

 俺は英雄に生きると誓ってるんだよ」


 ジャックがあたふたしながら顔を赤くする。


 酔ったジャックはベル程ではないがいつもより饒舌に感じる。


 もともとよく喋ってくれるから分かりづらいけど……


「キョウはどうなんだよ?

 お前は思わぬところでとんでもないやつだからな。

 案外、こういうことも進んでたりするのか?

 俺はもう驚かないぞ!」


「思い人って?

 す、好きな人ってこと?

 好きな人はいるよ。

 相手も多分思ってくれてると思う」


「おぉい〜、なんだよ。

 ちょ、両想いかよー。内気な感じで。

 それ。おま、やっぱりそんなところも想定外かよ。

 で、なんだよ、やっぱり進んだりするのかよ。

 大人への階段踏み出してんのかよ?」


 ジャックは興奮しながら体を前に乗り出して。

 ベルもニヤニヤしながらこちらを見ている。


「なに、進むってどういうこと?」


「あー、おまえは。

 じれったいなー。だからよー、あれだ。

 そ、そう。キ、キスとかのことだ」


「キス? キスならしたことあるよ」


「やるわねー、キョウ君」


「なにーー?おまえ、本当か?」


 ジャックは僕の胸ぐらをつかみー、ブンブン振る。


「なんだよ。おまえ!

 まさか知らない内にサラに手を出したりしてないだろうな?」


「なんで、いきなりサラが出てくるんだよ」


 サラ?手が早い?


 あぁ、ここでやっと、僕はジャック達の勘違いに気づく。


「家族だよ。

 僕の好きな人って。

 父さんや母さんや妹達もおじいちゃんも。」


 ベルは大笑いしている。


「おまえな……なんだよ、それ。

 思い人っていうのは好きな異性の事だ。

 つきあったり結婚したりする人のことだよ!」


 心底呆れたように言うジャックはどこか安心したように見える。


「う、うん。

 そ、そういうことだよね。

 そういう意味なら、あんまり考えたことなかったな」


「ははは、キョウ君らしいわねー」


 ベルは楽しそうだ。


「ガハハ。キョウ!

 お前は想定内で想定外の男だもんな。

 おまえとはこれからも友達でいれそうだ!」


 ジャックがうまいんだかうまくないんだかわからない事を言う。

 ベルが大笑いして僕もつられて笑う。


 みんなで笑う。


 なんの気ない何回目かの酒場。

 ジャックが初めて僕を友達と呼んでくれたことを僕は見逃さない。


 初めての友達。


 ジャックは何も意識せずに言ったんだろうけど、僕はとてもうれしかった。



 異世界に来て、初めて家族ができた。


 15歳でいきなり離れ離れになった。


 だけど、ひょんなことから撲を友達と呼んでくれる人とお酒が飲めるようになった。


 前世の僕じゃあのまま過ごしていても友達なんてできなかっただろうに……


 あの丸太の家で過ごした時間が僕を変えてくれた。


 家族の暖かさが僕の世界をこんなにも豊かにしてくれたんだ。


 みんな元気だといいな……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ