ゆりかご
晴れ渡った空、その光が差し込む部屋。
フランスの宮殿ように金銀宝石で彩られた寝室のなかに、大きな天蓋付きベッドがある。
暖かく丁度いい気候のなか、肌触りの良い純シルクの布が2人の少女に掛けられていて、薄いシルクはその上からでも姿をはっきりとさせる。
ひとりは身長が低く、輝く金色の髪が自然に波うっている。顔の造形は均整の美の象徴のようで、ギリシャの女神像にも劣らない。今は閉じているが、その瞳はどんな宝石よりも美しい緑色の反射を見せる。
体は華奢であるが、その肩口からは柔らかな肉質が感じられる。
その少女と抱き合うようにして寝ている、もうひとりの少女は比較的少し身長が高く、同じ金髪に同じ瞳、ただ体つきは柔らかく、少女の姉のようであった。
ーーぴろろろろ、と小鳥が鳴く。煩わしい車の音も、隣人の声も音も聞こえない。外には植物園に池に野原、ちょっと遠くには山と、精神を苦しめる近代文明の影は全くない。
小さな少女が身じろぎをする。するともうひとりの少女が目を覚ました。
そして少女の顔を見て、眠っていることを確認してから起き上がろうとする。
久方ぶりの起床である。朝食の準備をしなくてはいけない。
少女を起こさないようにその腕を抜ける。その体が起き上がってベッドを出ようとした時、服の袖を掴まれて、はっとして少女の顔を見た。
しかし彼女は眠っている。その様子に胸を撫で下ろし、優しいあきれ顔でベッドへ戻った。
そして宙を数回つつき、少女の方に向き直るとその頭を胸に抱いて少女が起きるのを待つのだった。