義妹と兄
「お兄様、起きてください朝ですよ。今日は約束の日ですよ!」
「ん、ああ、おはよう百恵」
「おはようございます、それではお出かけの準備が終わりましたらリビングに来てください」
「わかった。」
なぜこんなことになったのかというと俺が千愛と百恵にプレゼントを渡した翌日、千愛と百恵が俺の部屋に押しかけてきて急な提案をしてきたのだ。空いている日に千愛と百恵と個別に出かけてほしいとのことだった。それは三人でもいいんじゃと提案したところ即刻却下されてしまったのだ。なぜこんなに強引なのかは正直俺にはわからん!
「お兄様ー、まだでしょうかー?」(百恵はいつにもまして強引な気がするがまあ、あんまり気にすることではないか)
「今行くよー!」
ちなみに百恵ともう一人の提案者である千愛は今日は留守番だ。
〜二日前・妹side〜
一誠との個別デートの約束を取り付けた千愛と百恵は出かける日の事について話していた。
「お兄ちゃんとのデートなんてテンションあがるね!」
「そうですね」
「あ、そうだ今回はさ個別デートなんだしあとをつけるのはなしにしない?」
「はい、そっちのほうが落ち着きます」
「そんじゃあ、決定ね!」
「ええ、あ、あと千愛さん」
「ん、なに?」
「いえ、やっぱりなんでもないです」(これは今言うべきでないですから‥‥)
「なによ〜」
「なんでもないですよ」
〜一誠side with百恵〜
「それで?今日はどこに行くんだ?」
「決めてません!」
「いやいや、めちゃめちゃ晴れやかな表情で言うのかよ、おい。じゃあどうするんだ?」
「私達が行きたい場所全部に行きましょう!」
「千愛には八時には帰るって言ったんだからそれまでには帰れるようにな。」
「それはもちろんです」
「じゃあ最初どこにする?」
「それでは、お互いの行きたい場所交互に行くというのはどうでしょう?」
「賛成だ」
「まず、私からショッピングモールがいいです!」
「んじゃま、行こうか」
その後、ショッピングモールでは百恵の服を選び、昼食がてらにファミレスに入り、水族館でイルカのショーを見て、映画を見た。
「お兄様、最後に一箇所だけいいですか?」
「暗いけど八時にはまだ早いし、もちろんだよ」
「私、海に行きたいです。」
「この時期にか?」
「はい」
俺と百恵は電車で移動し三番目に行った水族館にわりと近い海に来ていた。季節も海の時期ではなかったので人の気配は全くなかった。
「この時期に海に来るのも悪くはないな」
「私から行きたいと言っておきながらここまで良いとは予想外でした。」
「結果オーライってやつだな」
そこで会話が途切れたがそこには波の音だけが響く心地の良い静寂が訪れている。が、静寂は長くは続かなかった。
「お兄様は千愛さんと私のことは好きですか?」
「それはもちろんさ」
「では、千愛さんと私だったらどちらの方が好きですか?」
(ちょ、おい待てよいまなんつった?千愛と百恵のどっちが好きかなんて、なんでそんな質問が百恵の口から出てくるんだよ!)
「どっちって、選べないかななんたって俺たちは兄弟なんだぞ?」
「じゃあ兄弟で恋愛す―いえ、なんでもありません‥‥」
「百恵最近なんかあったのか?最近の百恵なんか変だぞ」
そう、最近の百恵はなにかが変なのだ。やけに俺に対して強引だったり、ボーっとしていることが増えたりと前までとは明らかに変わっている。なにかに悩んでいる、そんなような雰囲気なのだ。
「いえ、なんでもないです。気にしないでください。」
「百恵、俺でいいならどんな悩みでも聞いてやる!だから話してくれ!俺はお前の兄なんだよ!」
「―めなんです‥‥」
「ん?なんだって?」
「お兄様じゃダメなんです!!」
「ん、なっ、そ、そうか寒くなってきたしそろそろ帰ろうか」
「は、はい‥‥」
その後、俺達は家につくまで、いや、家についてからもその日は言葉を交わすことは一度もなかった。