弁当をめぐって
「お兄ちゃん、朝だよ起きて。」
まだはっきりとしない意識の中、俺はうっすらと目を開けると眼前には妹の千愛がいた。やはりいつもと変わらずかわいい奴だ。
「ほら、お兄ちゃん起きてってば!」
「んっ、ああすまんな、あとおはよう千愛わざわざ起こしに来てくれてありがとな。」
「べ、別にお兄ちゃんのためじゃないし、たまたま気づいただけだし。」
「そうですかい、まあでもありがとな。」
しまいに千愛は照れたのかふいっとそっぽを向いてしまった。ようやく目覚めた俺こと櫻井一誠は学校の支度を終えると2階の部屋をあとにし1階のリビングへ赴くと千愛は椅子についておりもう1人の妹である百恵はキッチンにたって料理をしていた。
「お兄様おはようございます、もうすぐ朝食ができあがりますので少々お待ちください。」
「おはよう、百恵毎朝ありがとな。」
「いえ、やりたくてやってることですから。それよりも朝食が完成したので千愛と一緒に運んでいただけますか?」
「了解」「わかったー」と千愛と俺いうと颯爽とテーブルのうえに朝食を運んだ。今日の朝食はトーストとスクランブルエッグとみそ汁だ。相変わらず美味しそうだ。百恵も椅子につくと
『いただきます。』
の合図で食べ始めた。
「千愛と百恵は今日は学校休みなんだっけか?」
「そうだけど。」
「なら2人で留守番お願いな。」
「わかった。」
その後黙々と食事をすませると俺は学校に向けて歩をすすめた。俺の通っている清須高等学校は家から徒歩5分の距離なので比較的に通いやすい。ちなみに2年生である。妹の2人は清須高校の付属中学である清須中学の2年である。百恵の方はもともと別の中学に通っていたのだが理由があり編入したのである。理由というのは実は俺と百恵は本当の兄妹ではないのである。親の離婚と再婚が起因して俺と百恵は兄妹になったわけだ。ようは義妹という訳だ。もちろん千愛は実妹だ。なんてことを思い出しているとあっという間に学校に着いた。
〜妹side〜
「お兄ちゃんが弁当を忘れたですって?それじゃあ私が届けてくるからよこしなさい。」
「いえ、お兄様には私が直接届けますのでご心配なく。」
「いや、私が」「いえ、私が」
「往生際が悪いわね、実妹の私にどんと任せなさいって」
「いえいえ、義妹とはいえつくったのは私ですから私が届けるべきでは?」
この2人は兄がいる前では決してこんなことはしないのだが兄がいなければいつもこんな感じなのである。
「じゃあ正々堂々じゃんけんで決めましょう。」
「いいですわ、では、」
『じゃーんけーん、ぽい!』
「やった!じゃ勝った私が届けるからよこしなさい。」
「悔しいですが負けたなら仕方がないですわね」
そしてなんだかんだ仲いいのもこの2人なのである。
〜一誠side〜
「よう、一誠」
「おはよう、龍哉」
龍也と挨拶を交わした俺は席へつくとそのまま机に顔を伏せた。すると教室の入り口の方が騒がしかったので顔をあげるとそこには美少女がいた。教室の左端にいる俺はあまり視力がよくないので前の入り口にいる少女を美少女とまでしか認識できなかったのだが少女は俺の視線に気づくとこちらに近づいてきた。驚いた俺はあたふたしていたが近づいてきてようやく気付いたのだがそれは妹の千愛であった。そう、妹である千愛は美少女である。(かわいい妹の顔を認識できなかっただと…不覚!)
「お兄ちゃん、お弁当忘れてるんですけど!それになんか焦ってたみたいだけどどうかした?」
「あ、あぁ。お弁当か、すまんな千愛、あと俺焦ってたか?」
「べ、別に。焦ってなかったんだ、あっそ」
といい千愛はそっぽを向いて帰って行ってしまった。教室での騒ぎがひと段落したと思うと教室では普段目立たないはずの俺にクラスの人間の目線が一斉に俺に集まったかと思うと龍也が
「おいおい、お前さっきの美少女は誰だよ、彼女か?」と言ってきた。クラスの人間が静かなのは俺の返答に聞き耳をたてるのであろう。
「違うよ、妹だよ、妹。」というと皆、落胆したのか一斉に教室の騒がしさが戻った。
「いいなぁ、俺もあんな妹もちたいものだぜ。」
「そうだろう、そうだろう」(って、やばい、シスコンがばれちまうよ、急いで訂正しなければ)と思うのと同時に
「お前まさか、シスコン!?」と鋭い一言がいれられた。
「ち、ちげえよ、んなわけあるか!」
「どうだろうな?まあそんなことより今日暇か?」
(疑われてるだろうが、話逸らしてくれて助かったぜ)
「あ、あぁ、すまんな今日は用事があるんだ。」
「そうかぁ、じゃまた今度な!」
「あいよ。」
その後は特になにもなく学校が終わった。しいてあったといえば妹弁当、じゃなくて妹の作った弁当がうまかったということだけだろう。