死を知るため
澄み渡る青空
ミニチュアのようなビル群
排気ガスによって、腐りきった空気
そして、ゴミのような人々
現在そのすべてを、空に近い場所で、体感している。
現在地は、都内の喧騒から少し離れたとあるビルの屋上だ。
風に、思ったよりも強く吹かれ、耳が赤くなっていく。
ペンキで染めたような髪をしている学生がたまに出没し始めるころ、俺は、一人空を見ていた。
「んっ~~~~~~~。」
身体を伸ばすだけで、落ちそうになる。
落下防止のための柵を越えたため、たった一歩先には、文字通り何もない。
後ろの柵につかまり、体を少し前に倒す。
すると、立っているビルと、その向かい側のビルの隙間を見下ろす形になる。
そのまま、じっと見降ろす。
地面だ。
かなり距離があるが、まごうことなきアスファルト君が、俺を見つめている。
少し照れる。
あぁ、勘違いしないで欲しいが俺は、普通だ。
そりゃ、幼、小、中と、友達と呼べる相手がいなかったからか、
人より少しばかり感性がずれている気もするが、
俺は、いたって普通だ。
俺じゃなくても、物に愛を感じる人は、大勢いるはずだ!
例えば、文房具。
そう! あの自らを犠牲にして世界の理を正す、純白の騎士
消しゴム君!!!
自己犠牲の塊といえる消しゴム君からも愛を、強く感じれるだろう。
例えば、文字を消した後に残るケシカスのわずかな摩擦熱だったり。
力を入れ過ぎて、消しゴム君の体が壊れてしまう儚さだとかに、えr・・愛を感じるだろぉ!!
ほかにも、はじめは、ツンツン角ばっているのに、
かまえばかまうほど、丸くデレてくるところにも、萌・・・愛をかんじるだろぉ!!
そして、そのうちに別れがすぐそこに来ていることを悟ってしまった時の絶望感とか、
たまんねぇ。
あっと、変な言葉になってしまったが、
とにかく、だれもが物に愛を感じるということに納得してくれただろう。
ん・・・・・・・・
何の話だっけ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あぁ。
俺が、どれだけ普通なのかという話だ。
自分を客観的には、見れないが
これまでずいぶんとのんびりかつ、凡庸な生活を送ってきた様に思う。
俺は、3月22日に一家待望の長男としてこの世に産まれた。
待望だったわりに、ペットのほうが、かわいがられでいたが、長男では、普通だろう。
それに、両親は、少し変わっていたが、俺を支えてくれた。
ばあちゃんと、じいちゃんは、小さいころに死んでしまったが、
よく遊んでくれたのを覚えている。
よくというのは、お察しのとおり
遊ぶ知り合いが、ほとんどいなかったから
その流れで、よく遊びにいっていたのだ。
先ほど話した通り、俺は、友達が少ない。
小学生の頃は、謎のかっこつけ病が発病し、
人をバカにするのが好きな、くそ野郎だった。
それでも、時間がたつにつれて精神的にも成長し、人と真面目に話せるぐらいには、成長した。
だが、小学校でついたイメージは、なかなか取れず、
俺は、中学3年間一見普通だけど頭おかしい人として扱われ、
友達どころか知り合いも作らずに過ごした。
ここで、重要なのは、出来なかったのでは、なく
作らなかったという事だが、それは、今いい。
それに、か、家族いれたら、ゼ、ゼロ人じゃないんだからねっ。
あぁ。いや、家族入れてもゼロだな。
俺は、一人でふざけるのをやめ、
空に近いところにで、なぜこんなことをするようになったのか、思い出す。
今は、中学生と高校生のはざまを程よく楽しんでいる。
いや、正確にはいた。
単純だ。
両親が死んだ。
交通事故だ。
新聞にも確かちょろっと載った。
両親は、バカ息子の合格発表を聞き、
年甲斐もなくはしゃいで、人のいう事も聞かずに会場まで迎えに来た。
しかし、アホ息子まで残り数十メートルというところで、
反対車線の対向車が、居眠り運転によってハンドルをきりすぎて、家族の車とほぼ正面衝突した。
お互いに乗っていた人たちは、全員死亡。
新聞には、簡潔に事実と今後の課題等5行程度にまとめて書かれていた。
だが、死の現場を目の当たりにした俺からいうと、決してあっけないわけでわなかった。
どこに隠してたのかという量の中身をぶちまけ、耳が悲鳴を上げるぐらいの断末魔を上げていた。
色もよく映画で見るようなピンク色でなく、ほぼ紫色だった。
漫画のような名台詞も、ドラマのような奇跡も生まれない。
ただそこにあったのは、単純な 死 だった。
問題があったとすれば、その死に長男が興味をもってしまったことぐらいだ。
昔から、好奇心と欲望が強かったためなのか、それはもう発情した男子中学生のように興味を持った。
事故で、頭がおかしくなってる訳じゃない。
元から興味は、あったのだ。
そのきっかけが、両親の事故死というだけだ。
死そのものが、何か。
死の後というのは、何か。
それを身をもって知るために俺は、ここにいる。
死というのは実に非生産的で何も生み出さない。
生物の構成上必要ないだろう。
しかし、死は、こうして俺の目の前にもある。
金属の塔を上り、そこから落ちるだけで、出現する。
SSSレアの様に完全ランダムなわけでもなく。
ただ、肉体の許容範囲を超える力が加わった瞬間、現れれるのだ。
必要がないにもかかわらずあるのだ。
いや、今の環境には、必要だろう。
食物連鎖を止めてはいけないからな。
だが、俺が言いたいのは、そこじゃない。
なぜ死は、あるのか。
そもそも、死ななくくなれば、その構図そのものが必要では、なくなるのに。
なぜ死は、あるのか。
死ななくなれば、無限に生産が出来るのに。
なぜ死は、あるのか。
死ななくなれば、長い時間をかけて進化せずとも適応できるのに。
なぜ死は、あるのか。
死ななくなれば、永遠に研鑽と経験を積む事が出来るのに。
なぜ死は、あるのか。
死ななくなれば、いつかは、賢者にさえなれるのに。
なぜ死は、あるのか。
死ななくなれば、別れ、胸が締め付けられることもないのに。
まぁ、身をもって知るといっても、簡単に言えば自殺しに来たわけだが、別に死にたいわけじゃない。
死、もっと言えば死の後が何かを知りたいだけだ。
そのせいで、この素晴らしい世界から消えてしまうが。
一応、名前のせいで少なく、決して俺のせいでは、ない知り合い達にもそれぞれ手紙は、送っておいたのであんまり悔いもない。
PS4 VRでエロゲ体験が出来なかったのは、心残りだがそれはそれだろう。
天国があればそこでやれるかもしれないしな。
おっと、やるといってもゲームの話だぜ。
別に、シモの話じゃないぜ。
どちらにしろ、自家発電だが。
「・・・・・・・・ふぅ」
おっし。伸び伸び体操も終わって、気が前向きになってきたし、さっさといくか。
俺は、改めて姿勢を正す。
そして、ゆっくりとほんの一歩だけ踏み出した。




