窓
夜。窓を見ると、ヤモリがへばりついている。8センチくらいだろうか。けっこう大きい。
ヤモリの腹は白い。黒い窓ガラスとの対比があざやかだ。ヤモリはじっとしている。明かりに寄って来る虫を狙っているのだろう。
ヤモリが動いた。人間の目には見えないが、虫がいるのだろう。ヤモリはそろりそろりと近づいていく。そしてすばやく頭を突き出した。顎の下がうごめいた。食べたのだ。そしてまたヤモリはじっとしている。
ヤモリは虫が捕食可能圏内に入って来るまで、動かず、目立たず、さも自分が無害であるかのように装っている。そして捕食できると思ったら、とる。
私はこの眺めがとても好ましく、ずっと見ていた。
夜。窓を見ると、カエルがへばりついている。2センチくらいだろうか。ふつうの大きさだ。
カエルの腹は白い。黒い窓ガラスとの対比は、さほどではない。カエルはヤモリより小さいからだろうか。カエルはじっとしている。何をしているのだろう?
カエルがじわりと動いた。こいつも虫を狙っているのか? カエルが頭をすばやく突き出した。たぶん虫をとったのだろう。またカエルはじっとしている。
カエルは虫が捕食可能圏内に入って来るまで、動かず、目立たず、さも自分が無害であるかのように装っている。そして捕食できると思ったら、とる。のだろうが、なぜかヤモリほどの狡猾さを感じさせない。むしろ滑稽さを醸し出している。
夜。窓を見ると、女がへばりついている。150センチくらいだろうか。ちょっぴり小さめだ。
女の腹は白い。黒い窓ガラスとの対比は、さほどではない。白い面積が大きすぎる。窓ガラスのほぼ一面が女で占められている。
女は何をしているのだろう?